映画化不可能といわれてきたJ・R・R・トールキンの原作が、3部作構成の壮大なファンタジー大作として映画化された。そのトリロジー第1部となる『ロード・オブ・ザ・リング』が、3月2日よりロードショー公開される。アメリカでは興行的な大成功はもとより、先頃発表された本年度のアカデミー賞でも、作品賞・監督賞など最多13部門にノミネートされ、その結果にも期待がよせられている。
 2月20日、本作で主人公フロドを演じたイライジャ・ウッドさんをはじめ、リヴ・タイラーさん、オーランド・ブルームさん、ショーン・ビーンさん、ドミニク・モナハンさん、そしてエグゼクティブ・プロデューサーのバリー・M・オズボーンさんと、総勢6名がこの話題作のキャンペーンのため来日を果たし、帝国ホテルにて記者会見が行われた。
 また、マスコミからの熱心な質疑の後には、原作の大ファンであり、ロンドンで行われたワールド・プレミアにも出席した女優の内山理名さんが駆けつけ、ゲスト全員に花束を贈った。

$navy ☆『ロード・オブ・ザ・リング』は、2002年3月2日(土)より丸の内ピカデリー1他全国松竹・東急系にて超拡大ロードショー公開!$








Q.ご挨拶をお願いします。
バリー・M・オズボーンさん(プロデューサー)——今日は集まってくれてありがとう。大変温かい歓迎を受けて感激している。私達はこの映画をとても誇りに思っている。たくさんの出演者と来日できて、大変嬉しく思っている。
オーランド・ブルームさん(レゴラス役)——本当にすごい歓迎に感動してます。ありがとうございます。東京までこの映画を持ってきて、皆さんに観て頂くことはすごく嬉しい。この映画は作るのがとても楽しかったので、それと同じくらい観客の皆さんにも楽しんでほしいです。
リヴ・タイラーさん(アルウェン役)——ハロー!この記者会見は、私がこれまでの人生で経験した中で1番スケールの大きな記者会見で、とても緊張してます。でも、東京にまた戻ってくることができてとても嬉しいし、この映画を大変誇りに思っていますので、日本の皆さんにも是非楽しんでいただきたいと思ってます。
イライジャ・ウッドさん(フロド役)——ハーイ!沢山の人が来てくれて嬉しいです。この作品を長い旅をの末日本にお届けすることができて誇りに思います。日本に来るのは初めてで、とてもエキサイティングです。ぼく達が楽しんだように、みなさんにも映画を楽しんでほしいです。
ドミニク・モナハンさん(メリー役)——ハイ!「プロモーションでどの国へ行きたい?」と聞かれたら、迷わず日本と答えました。そのくらい僕たちは、寿司とか、諸々のものが大好きです。素晴らしい映画ですので、楽しんでください。
ショーン・ビーンさん(ボロミア役)——僕もみんなと同じように、ここに来れて嬉しいです。実は、東南アジアに来るのは初めてなので、本当に喜んでいます。ぜひ映画を楽しんでください。








Q.過酷な撮影で、肉体的にも精神的にも相当大変な部分があったかと思いますが、どう乗り切られたのでしょうか?撮影の中で苦労した点と、リフレッシュの方法などお聞かせください。
ショーンさん——確かに、非常に長い期間の撮影で、皆すごく疲れた。戦闘シーンが多かったし天候もひどかったりで、ゆっくり休みたいと思う事もありました。でもこれは、“仲間”の映画なんです。そして映画同様スタッフやキャスト全員が“仲間”という意識で互いに助け合っていけたことが、この困難を乗り越えさせてくれたと思います。
イライジャさん——彼の意見に全面的に賛成です。そして我々の案内をしてくれたのは監督であるピーター・ジャクソンの情熱でした。厳しいスケジュールの中で、みんなで力を合わせて素晴らしい人間関係を作り、お互いに親しくなることもできました。だから支え合えたんだと思います。正直言うと時には、集中しすぎるあまり、まわりが見えなくなることもあり、距離を保ってゆっくり周囲を見渡すことが必要な時もありました。今、何をしているのか?ということを、ピーターが常に思い出させてくれたからこそ、僕たちは撮影を続けることができた。でも、信じられないくらい大変な作業でしたね。
リヴさん——撮影中、すごくクリエイティブな人たちに囲まれて非常にいい撮影ができました。ニュージーランドの素晴らしい環境の中、普通の映画を撮るのとは全く違った環境の中で撮影する楽しさがあったんです。自由もありましたし毎日がクリエイティブなチャレンジの連続でした。それを1年半という長期間に渡ってやったんです。その間仲間たちと遊ぶという余裕もあったし、自分の演じるキャラクターを発見していくという喜びもありました。困ったときには俳優同士がお互いを助け合い、そしてトールキンの心を熟知したスタッフたちが一緒にいてくれるということが大変な強みでしたね。
オーランドさん——ニュージーランドは信じられないくらい美しい国です。ピーターはその風景をすごくうまく使いこなしていて、この映画の中でも1つの重要なキャラクターとして使ってます。我々俳優は、仕事の無いときには、ニュージーランドならではのレクリエーションとして、サーフィンや山登りをしてリラックスした。この撮影は、ものすごく大きなスケールのスペシャル・プロジェクトだ。そういうプロジェクトに関われたこと自体、すごくラッキーなあアドベンチャーだと思います。確かに撮影は大変で、例えば9週間も夜間撮影が続いた時もあったけど、スタッフたちが常に集中力とエネルギーを持ちつづけてくれたから、とても楽しい経験でした。








Q.オーランドさんは、黒澤監督の作品を観て、その中に描かれている侍の精神を役の中に表現されたということですが、具体的にどの作品のどういった部分を取り入れたのでしょうか?
オーランドさん——『七人の侍』にすごく刺激を受けました。エルフ族はフォーカスを持った種族です。超自然的な力を持ち、力強く、感覚が鋭く、反応が素早く、威厳を持った種族です。そういう役をどうやろうかと思っていたときに『七人の侍』を観て、侍達のキャラクターから、いつも背筋を伸ばし、どんなことにも迅速に対応する、そんなところを参考にしました。

Q.バリーPは、いわゆる「ピーター・ジャクソン組」とは違うキャリアを持っているように見受けられますが、今回どのような経緯でピーター監督とコラボレーションする運びとなったのでしょうか。
バリーP——彼のチームの一員、例えば彼と組んでいたアートディレクターとは以前に仕事をしたことがあるし、他のスタッフとも個別に仕事をしたことはあるんだ。この映画は、それこそ史上空前のスケールで製作された映画で、クルーが2000人もいて、撮影班が3班に分かれて絶えず撮影をしているという状況です。主要な撮影班はもちろんピーターが指揮をしているが、その他の班にもそれぞれチーフがいたんだよ。さらに、空の撮影をする班、戦闘シーンを撮影する班、ミニチュア、正確にはミニと呼べないほど大きな模型だから“ビッグチュア”と呼んでいましたが、その撮影をする班だけでも4班あって、それらをすべてピーターが統括していた。本当に大がかりで困難な撮影だったので、私のようなエキスパートが必要とされ、この企画に携わることになったんだ。

Q.ショーンさんの役(ボロミア)は、人間の中の「悪」を表しているわけですが、それについてはどう思われますか?
ショーンさん——この役が言わんとしていることは、人間が力を持ったときに、そしてそれを使用する意思が悪意に変わったときに一体どうなってしまうかという一種の警告だと思います。最終的には物質的なものではなく、精神的なものがより強力であり、間違ったものの捉え方をした場合にどういったことが起こってしまうのかという危険を、社会に知らしめる役だと思います。この映画の大きなメッセージは“希望”だと思います。1人1人は弱いとしても、結束すればどれほど力になるか、堕落してしまうような危険がある中でどうやって生きていけばよいのか、ということを表現していたと思います。







Q.アカデミー賞に本年度最多の13部門もノミネートされましたが、その感想をお願いします。
リヴさん——こんなにたくさんノミネートされ、ドキドキしてます。一番嬉しいのは、スタッフとして働いているたくさんの人たちが認められ、ノミネートされたことですね。美術、衣装、脚本、衣裳、特撮……。私たちはこうした華やかな席に出ますが、そうでないスタッフ達にスポットを浴びるのが、それが何よりも嬉しいですね。
ドミニクさん——スタッフのみんなは私たちがニュージーランドに行く7・8年前から、リサーチをしてくれていて、例えば衣装ひとつをとっても、ドワーフ族と人間とそれぞれをどのように個性的に見せるかってことをずっと考えてくれてたんです。それと、この映画は3本同時に撮影を進めたわけだから、そういう意味でもその準備は並大抵ではなかったはずです。ですからそれがピーターをはじめ、スタッフみんなの力の結晶として、こういう形で評価されたのは嬉しいし、良い結果になる事を願っています。
バリーP——13部門という認められ方は、大変嬉しく価値のあることです。我々はこの映画を誇りに思っているし、素晴らしい映画だと自負しています。我々だけでなく他の皆さんも同じように思っていてくれることが大変嬉しいです。当初、このような大作はできるものか、ニュージーランドで撮影なんかできるわけがないとか、音響に関するポストプロダクションなんて到底無理だとか言われていました。しかし、映画は完成し、認められ、アカデミーにもノミネートもされました。このことは我々が下した決定が正しかったことを物語っていて、そういう意味でも、非常に良かったと思っています。
イライジャさん——こんなにノミネートされるなんて、なんだか非現実的な感じです。この映画の撮影期間は、演技しているというより、役柄の人生そのものを生きているみたいでした。ある大きな出来事を、一緒に暮らして経験させてもらったという感じで、それはとても身近な感覚でした。だから、初めて映画が公開されたときも「本当なのかな?」という思いがあって、たくさんの人が努力してきたこと1つ1つの積み重ねが報われたということが、何よりも誇らしいです。








Q.皆さんが、もし他のキャラクターを演じられるとしたら、どのキャラクターを演じたいですか?
ドミニクさん——アルウェン!(大きくガッツポーズ)
イライジャさん——今回ほとんど出番がなかったし、拷問を受けたり、大変な事になってるけどゴラムです。子供のころから大好きなキャラクターなんだ。
リヴさん——私の乗った白い馬かな。だって、撮影中も苦労しないですむでしょ?(笑)
オーランドさん——ヴィゴだね。アラゴルンじゃなくて、ヴィゴ本人(笑)。
バリーP——サルマンというか、クリストファー・リー。彼が日本に来ていたら、もっと楽しかったと思うよ。彼は言葉を習得するのが素晴らしく上手だから。日本語もとてもうまく話せるんだよ。
ドミニクさん——ホビットのスタンド・インだったケレンです。彼らの動きは僕たちの鏡のようなもので、僕らは彼の動きや仕種から、ホビットというキャラクターを作り上げていったんだ。

Q.ホビットの陽気な性格は、話が進むに従い次第に複雑に難しくなっていくと思うのですが、その気持ちを演じるにあたって、気をつけた点を聞かせてください。
イライジャさん——ホビット役は本当に楽しくて、なりきるのはそれほど難しくなかったです。実は撮影に入る前に2ヶ月間程のリハーサル期間があったので、その間に仲良くなったから、お互いに“仲間”の気持ち、一緒に苦労するという感じは築き上げられました。段々物語は暗くなっていくわけだけど、それぞれの運命は変わっていきますから、お互いそれぞれの役へのアプローチの仕方は変化してくるし、自分なりに考えていきました。だから4人で集まったときには、いつでも4人に戻れるという感じでした。
ドミニクさん——4人の仲間はトールキンの原作とおりで、何も知らない無垢な青年たち、シャイアという村を出たこともない彼ら一歩外に出た瞬間、どうなるんだろうと考えました。彼らは血を見たり死に直面したりするので、大きな変化があるだろうと。そして4人全員がそれぞれに変わっていく。これは演じる側にしても、物語の途中でそういう風に変わっていくということはなかなか得がたいことであり、だからこそ互いに愛し、励まし、結束知っていくということが、更に生まれてくるのではないかと話し合いました。

執筆者

宮田晴夫

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