松井久子監督「折り梅」舞台挨拶 前作「ユキエ」のファンから生まれた作品
「ユキエ」の松井久子監督が≪家族の愛≫をテーマにこのほど、「折り梅」を完成させた。実話が元になっている本篇は前作同様、アルツハイマー病を描きつつ、同時に“いのちの輝き”を問いた感動作に仕上がっている。11月22日には東京・徳間ホールで完成披露試写会ならびに、舞台挨拶が行われた。出席者は松井監督を筆頭に主演の原田美枝子さん、吉行和子さん、原作者の小菅もと子さん。「この作品は痴呆ですとか、介護という括りだけでなく、子供からお年寄りの方まで幅広い層に観てもらいたいです。特に男性の方には(笑)」(松井監督)。当日の舞台挨拶をレポートする。
※来春、シネスイッチ銀座ほかにてロードショー!!
全ては「ユキエ」から始まった。アルツハイマー病の妻とその夫のアメリカ人の夫婦愛を描いた同作品は既に全国各地で600回以上の上映会が行われている。ある時、観客の一人が松井監督を尋ねる。彼女と義母の介護生活を綴った自著「忘れても、しあわせ」を携えて。
松井久子監督 「ユキエ」の時、映画監督ってこんなにも大変なものか、と思いました。映画は懲りたーと思っていたんですけど(笑)。結局、この2作目「折り梅」を撮る事になりました。前作でもそうでしたが、監督として留意したのが、観客の皆様が自分の人生と重ね合わせて見れるような作品を、と作ろうということ。「ユキエ」を見てくださった小菅さんにこの原作を提供され、劇中に登場するお年寄りのグループも観客の方が紹介してくれました。観客の皆様と一緒に作っていった作品です。
原作者は小菅もと子さん。吉行和子演じる政子が描く絵の数々は小菅さんの義母が実際に描き上げたである。
小菅もと子さん 介護生活は8年目になります。義母は先週も1枚、絵を描きあげました。ごく普通の主婦である私が映画に関わるなんて思ってもみませんでした。撮影も何度か見せて頂いたのですが、なんだか、ここに立っている今も実感が湧きません(笑)。
吉行和子さんと原田美枝子さんのキャスティングは脚本執筆中からイメージしていたという監督。嫁・姑を実際に演じた2人は。
原田美枝子さん 夫の母親としか思っていなかった女性が、最終的にその枠を取り払うに至ります。取り払った時点で超えられる何かがあると、この映画は言っているのではないでしょうか。
個人的に好きなシーンは義母が巴の胸を触ってしまうシーン。触られた時はびっくりするんですが、寝ごとで義母が「おかやん」とつぶやくのです。政子という女性のインナーチャイルドを見て、巴が描いていた彼女の印象も取り払われていくんですね。
吉行和子さん 原田さんの胸を触ってスタッフには羨しがられました(笑)。(劇中では喧嘩しますが)現場では原田さんと本当に仲が良かったんですよ。
「折り梅」はセンチメンタルになり過ぎないところが好きです。撮影現場は熱気に溢れていました。「折り梅」と書かれたノボリが立っていたんですけど(笑)、そんな体験は初めてでしたね。
執筆者
寺島まりこ