昨秋の香港映画祭で上映され好評を博した『Needing You』(香港映画祭上映時は「孤男寡女」)が、ついに一般公開されることになった。
 恋に臆病でドジなOLのキンキー(サミー・チェン)が、プレイボーイの上司(アンディ・ラウ)に恋の手ほどきを受けるうち、いつしかふたりの関係は……というラブストーリー。監督は『ザ・ミッション 非情の掟』の記憶も新しいジョニー・トゥが、一転、じつに軽快なコメディに仕上げている。
 本作では、『ファイターズ・ブルース』のアンディ・ラウのビジネスマンぶりもさることながら、特筆すべきは、失恋のショックからなぜかトイレ掃除を始めてしまう妙なキャラクターのキンキーを演じるサミー・チェン。サミーは、それまで香港を代表する女性ヴォーカリストとして、またファッションリーダーとして君臨してきた。そんな彼女が、アンディ・ラウを相手に天然ぼけキャラを好演したことが話題となり現地では大ヒット。
 満を持しての日本公開。「私のことは、日本の皆さんはまだご存知でないかもしれませんが、まず映画を知っていただいて、その後で私のことを知っていただけたら」と語ったサミーの、来日インタビューをお届けしよう。

$navy 『Needing You』
11月10日(土)より新宿ピカデリー4にてロードショー
11月16日(金)より渋谷シネパレスにてレイトショー
12月大阪・パラダイスシネマにてロードショー$




●あなたが演じたキンキーという役柄のイメージは、それまでの歌手として活動してこられたサミーさんのイメージとはかなり違いますね。どちらかというとクールなイメージだったのに可愛らしいところのある平凡な女性を演じられました。そのことでご自分の中に抵抗とか何か感じるものはあったのでしょうか?
「抵抗はぜんぜんありませんでした。というのは、脚本を読んで、このキンキーというキャラクターは性格的にとてもトクをしているんじゃないかと思えたのです。こういう性格の人は、多くの人の共感を得やすいのではないでしょうか」
●この作品に出る前と出た後で女優業についてスタンスなどは変わりましたか?
「いろいろ変わりましたけれど、この作品に出演して女優業に対する興味が増しました。それまではほとんどの時間を歌手業に費やしていたのですが、この後、映画を一気に5,6本も撮りました。今では、女優業のウェートが増えています」
●ジョニー・トゥ監督については、一緒に仕事をしてみていかがでしょう?
「監督に対しては、認識が少し変わりました。知り合う前は、ひじょうに厳しい方だと思っていたのですが、なかなか面白い人だと思うようになりました。また、彼の監督としての才能を近い距離で見ることができました。ひじょうに男性っぽいアクション映画もこなせますし、エンタテイメント性の高い映画、アート性の高い映画も撮れる人ですね」
●アンディ・ラウさんとは本作と「痩身男女」(本年の第14回東京国際映画祭で上映)の2作で共演されていますが、アンディさんの印象は?
「相手役としてひじょうに呼吸が合っていたと思います。2作とも、香港ではいい興行成績をあげることができて素晴らしかった。3回目の共演ががあればいいですね。そのときは、もっといい成績を出したいものです」




●サミーさんには会社勤めの経験はありませんね? OLの役を演じるにあたってどういう研究をされましたか?
「姉に聞いたり、会社勤めの友人に聞いたり、あとは自分の想像です」
●劇中で恋人に言って欲しい言葉というのが出てきましたが、貴方自身が言って欲しい言葉は?
「(笑って)I LOVE YOU」
●共演してみたい日本の男優は?
「日本の男優の皆さんはとても素晴らしく、それぞれに特徴があります。もし共演するとなると、私が日本語を勉強しないと難しいでしょう。いま共演してみたい人は特にはいません。あえて言うなら、コミュニケーションの面から言って金城武さんがやりやすいのではないかなと思います。彼となら言葉の壁もなく北京語で話せますし。実際にそういうオファーが来ています。もし実現されれば、ジョニー・トー監督の映画で来年になるでしょう」
●コメディとシリアスでは、演技をする上ではどちらがお好きですか?
「コメディのほうが楽しいのではないかしら。撮るプロセスも楽しめます。シリアスなドラマに関しては、これから撮る機会が増えていくと思います。幾つかのそういう脚本が控えています」
●今後演じてみたい役はありますか?
「演じてみたい役はたくさんあります。たとえば一般庶民、ごく普通の人。あとスペシャリストという役もいいですね。今まではどちらかというとOLの役が多かったので、お母さん役もいいんじゃないかなと思います」
●今回の来日で、仕事以外でどこか行きましたか?
「昨日の夜についたばかりなので、外に出かける時間がありません。今日、仕事が終わった後でショッピングも兼ねて外に出てみたいと思います。日本の食べ物にもひじょうに興味を持っています。新鮮な刺身が食べたいですね」

執筆者

みくに杏子