アーティスト河村隆一、映画初主演作で太宰治に扮す!!来春の公開が待ち遠しい「ピカレスク」、撮影も大詰めの10月3日、千葉県は船橋の玉川旅館へ現場取材に行って参りました。この日の撮影では、太宰治と妻・佐和子(裕木奈江)が正式に結婚。祝言の際に、妻の前で過去の女関係を暴露されるという泥沼のシーンだったり…。「彼にとって一番言われたくないことでしょう。少なくとも本人(妻)のいない場でやって欲しいですよね」と河村さんも苦笑い。撮影後には河村隆一さん、裕木奈江さん、最初の心中相手を演じた朱門みず穂さん、9年越しの内縁の妻を演じたさとう珠緒さん、井伏鱒二役の佐野史朗さん、原作者で劇中にも特別出演する猪瀬直樹さん、伊藤秀裕監督が取材に応じてくれました。





——最初の主演作が太宰治。河村さんご自身と似ているところはありますか。
河村 人を信じられなかったけれど、本当は誰よりも人を信じたかった人なんじゃないかって思うんですよ。正直なところ、太宰治は余り好きな作家じゃなかったんです。でも、今回読み直してみて、入り込む余地は幾らでもあったというのか、表現方法は違っても自分に似ている部分もあるかなって。愛でも、友情でも、本当の事なんてあるはずがない、と思ってる。そうと、あきらめている癖に求めてやまないところがあったり…。

——女性を惹きつけてやまない、というところも似ているのでは?
河村 いや、それは、自分の口からは言えませんよ(笑)。何言ってんだってことになりますから(笑)。
冗談です、僕は振られることの方が多いですよ。

——太宰治の女を演じて。
朱門 河村さんの太宰は、すごく素敵な太宰さんです。女性が放っておけなくなるというのか。結果的には私だけが死んじゃうんですけど、一緒に心中できて嬉しかったですね(笑)。

さとう 私はねー、なんだコイツーって思いましたよ(笑)。1人で死ねばいいじゃん、なんか暗いし、何も女の子道連れにしなくたっていいじゃないって思っちゃう(笑)。でも、撮影が進むに連れやっぱりものすごく魅力あったんだろうな、って思い直すようにもなったんですけど。

裕木 私は太宰治を河村さんが演じるって聞いて興味を持ったんです。演じる正妻の佐和子は心中話すら持ち掛けられない女なんですけど(笑)。結婚式で夫の過去を知ってしまうのは…ドタキャンできるような時代じゃないですし、しんどかったんだろうなって思いますね。





——そして、悪役と言えば佐野史朗さん(笑)。太宰の井伏鱒二を演じてますが。
佐野 猪瀬直樹さんの「ピカレスク」は3年ほど前に拝読していまして。井伏の実話を暴くと言うのか、盗作やら引用やらね、発表の仕方もいやらしくてね。立派な人として売ってきた井伏ですから、演じるのも楽しいですよ。まぁ、表現者って往々にして悪い人、多いですけどね(笑)。
太宰の最初の心中なんか、今だったら殺人ですしね。そういう意味でサスペンスとしても楽しめるんじゃないかな。

——猪瀬さんに。ご自分の原作で映画に出るとはどんな気持ちなんでしょう。
猪瀬 いや、僕のはごく短いシーンですから。津軽弁を喋るのが難しかったけど(笑)。

——河村さんの太宰をどう思いましたか。
猪瀬 誤解を招くかもしれないけど、ナルシスティックな部分と言うのか、きちんと入り込める人間じゃないとできないと思ったんですよ。だから、うまいキャスティングだと思った(笑)。太宰って弱々しい人間と思われていますよね。だけど、5回も心中を起こすなんていうのは、相当たくましくなきゃできない(笑)。

——河村さんはナルシスト?
河村 ナルシストですね(笑)。職業的にも自分の作品を信じる事ができないとやっぱり、難しいでしょうからね。

——クランクアップまであと僅か。完成の意気込みを監督に。
伊藤 スケジュール的には…取りこぼした部分もありますけど、後半で追い上げて頑張ります。河村さんの太宰は新しい太宰像を作っていくだろうと思っていますね。また、佐野さんが言うようにサスペンスの要素もあります。テーマはレトロですけど、現代に通じるもの。公開を楽しみに待っていて下さい。

執筆者

寺島まりこ