小池一夫・上村一夫コンビによる70年代名作コミックが原作で、これまでも藤田敏八監督、梶芽衣子さん主演のコンビで二度映画化されてきた『修羅雪姫』が、装いも新たな超ハイパーSFアクションとして映画化され、このほど完成した。
 この作品の完成披露試写会が、9月12日に徳間ホールにて開催され、この作品で美しき刺客・雪を鮮烈に演じスクリーン・デビューを飾った釈由美子さん、本作が劇場用作品2作目となる新鋭・佐藤信介監督、そして500年の鎖国が続くもう一つの日本を映像化した樋口真嗣特技監督が舞台挨拶を行った。











 『LOVE SONG』に続く劇場用作品2作目にして、本場香港仕込みのハードなアクション(アクション監督として香港・ハリウッドで活躍するドニー・イエンが参加)と視覚効果によるヴィジュアルにより別世界を構築するスケールが大きな作品に取り組んだ佐藤信介監督は、「とても、ドキドキしているというのが本当のところ。撮影に入る前不安そうな顔をされていた釈さんが、撮影が始まってから「大丈夫ですか?」と訊くといつも「大丈夫です」と淡々と答えていたのが思い出されます。完成して、僕もお客さんの前で淡々と大丈夫ですといいたい気分です」と、心境を語った。撮影現場では、例えば釈さんが木の上に吊るされそこから飛び降りる場面を10回以上かけて満足の行くシーンを撮りながら、そういう場面であっても編集の段階でばっさり切り、妥協無き映画に仕上げたそうだ。「端正でありながら激しさがある。深いもののこもった、修羅を感じさせる映画になっていると思います、ごゆっくりお楽しみください」。
 「出来あがって初めて観た時に、凄い感動して。まるで自分じゃないみたいでした」と挨拶したのは、ヒロイン・雪役の釈由美子さん。クールなプロの女剣士が、反政府組織の活動家・隆との出逢いから、次第に新たな感情を芽生えさせていく姿が魅力的だ。最初の映画でアクションに挑戦。「自分が一番びっくりしました。普段ボケーッとかしてるのに自分がアクションなんて出来るのだろうかと(笑)」という釈さんは、撮影前には自主トレとしてジムに通い、走り込んだりジャズダンスをしたそうだ。初の主演作だが、毎日富士の麓まで通い、また和気あいあいとした現場にはプレッシャーを感じる暇などなかったという。最後に役柄について「強そうで弱そうな雪を、温かく応援してて観てもらえれば嬉しいです」と、アピールした。
 「僕の仕事の部分は、昨日の事件を踏まえて自粛ということで…」と、幾分スベリ気味のヤバ・ネタは樋口真嗣特技監督。「近未来というか、厳密に言えばパラレル・ワールドというか、鎖国が続いている日本のようであって日本でない全く違う成り立ちをした世界、どちらかというと『千と千尋の神隠し』に近いようなアプローチで、誰も観たことのない街を描いてみました」と、その世界観を語った。また樋口特技監督は、実はご自身も釈さんで映画を撮りたいと思っていたそうで、そのコメントは釈さんの魅力についてが中心に。「TVとかで観た時に、眼の奥に潜むカッコいい部分に、かってから着目していました。佐藤監督から釈さんでアクション映画をと聞いて、「くそ!やられた」と悔しく思いましたが(笑)、一緒にできまして。とりあえず、自分のやった所を観て欲しいですが、それ以上に釈さんの演った人を殺すような目つきというのは、本当に焼きついて離れない。釈さんは、本当はああなんですね…なんてね(笑)。そういった意味で、観たことの無いものがつまっている映画なんで是非観てください」。そのコメントに苦笑する釈さんであったが、是非とも劇場公開時には鋭い眼光に時折脆さをも垣間見せるニュー・ヒロインの誕生を、皆さんで確認して欲しい。

 なお、『修羅雪姫』はテアトル新宿ほかにて、12月上旬より正月ロードショー公開予定。また、今年の東京国際ファンタスティック映画祭2001において、10月29日には釈由美子さん、樋口真嗣特技監督を招いてのメイキング・イベント“釈由美子 in メイキング・オブ『修羅雪姫』”が開催され、メイキング映像や製作秘話など作品の魅力の一端が披露される予定だ。

執筆者

宮田晴夫

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