作家、詩人、ミュージシャンなど様々な分野で活躍を続ける述仁成さんの監督第2作『ほとけ』の、ロードショー公開がいよいよ始まった。辻監督が故郷である函館で撮りあげた本作品は、若者たちの行き場のない愛と孤独、生と死、暴力、コミュニケーションの不在といったテーマを細やかな演出で描き、ベルリン国際映画祭、ドーヴィル・アジア映画祭など海外の映画祭でも高い評判を受けての凱旋公開となる。
 8月25日初日を迎えたシネマスクエアとうきゅうは、作品を待望していたファンの皆さんが朝早くからつめかけ、場内通路も立ち見の観客で埋まる盛況。初回上映終了後には作品に出演された武田真治さん、yumaさん、大浦龍宇一さん、津田寛治さんによる初日舞台挨拶も開催された。





 舞台挨拶は主人公ライを演じた武田真治さんからスタートした。舞台に登場すると客席に向かって、「こんにちは!!お待たせしました!!」といきなりハイテンションな武田さん。客席の多くの女性ファンから「カッコイイ!可愛い!」と嬌声をあげる中、「なんか、ド〜ンという映画で本当にごめんなさい(笑)。これからも、こういう気持ちになりたい時は観てください」と挨拶。“ホトケ”とあだ名されるライ役については、「僕のバカな部分がいっぱい出てました、そんなことないよね(笑)」と答え、また客席のファンからの問いかけにも、終始ユーモラスに受け答えを行う。作品中一番好きな場面は、人を刺す場面……ではなくて、オートバイに乗る場面とのこと。
 盲目のヒロインユマを演じたのは、『千年旅人』に続いての辻作品出演になるyumaさん。「本当に素敵な映画なので、何度も劇場に足を運んで、重い気分になるなり、愛について考えるなり、色々な観方をしてください」と挨拶。なお、劇中で流れる『夜来香』、『アマポーラ』もyumaさんが歌っている。「本当に切ないシーンに、なんとも言えないレトロな曲がかかって、歌わせていただいてよかったなと思います」と、こちらもご自身納得がいく仕事だったようだ。
 本作の舞台となる架空の臥牛市は、北海道の函館で昨年の夏に撮影された。撮影現場をふりかえり、「皆仲がよく、すごく充実した日々を過ごせた」と語ったライの兄シバ役の大浦龍宇一さんは、本作のために10kg以上太ったという。「撮影前に10Kg太れというのが監督の条件で、2ヶ月しかなかったので大変でしたが成功してよかったと思います」と語った大浦さん、その時期は本屋等で雑誌のダイエット特集などを目にするのがかなり辛かったとか。また、弟役の武田さんの印象を尋ねられると、武田さんが舞台上で送るサインに苦笑しつつ一言「惚れた、それだけ(笑)」。
 シバの一番子分真蔵を演じた津田寛治さんは、「今日は僕がここに上がっていますが、出演者は皆さん素晴しい方ばかりで本当は皆に上がって欲しかったくらいです。皆を代表して、今日はありがとうございました」と挨拶。辻監督の印象は、「現場でも絶えず何かを演じて、楽しませようというサービス精神が旺盛な方です。自分の中のイメージが豊富で、それを何とか役者に伝えようとするパワーがすごく、それが細かい芝居のアドバイスになり新鮮だった」と語った。
 なお、辻監督も当初は舞台挨拶に出席予定だったが、現在撮影中の次回作が先週の天候不順でスケジュールがずれ残念ながら欠席となったが、司会の方からお詫びのメッセージが伝えられると共に、希望される観客の方全員に辻監督の直筆サイン入りチラシが郵送されるとのメッセージが伝えられ、舞台挨拶終了後の受けつけには、監督の心づくしに多くのファンが列を作った。

 なお、『ほとけ』はシネマスクエアとうきゅうで、好評ロードショー公開中。東京以外でも、今後全国順次公開が予定されている。

執筆者

宮田晴夫

関連記事&リンク

作品紹介