日伊両政府によって<日本におけるイタリア年>と決定した2001年、イタリアの様々な文化・芸術を紹介するイベントが大々的に行われているが、映画に関しても二つの映画祭イベントが開催されることんあった。一つは、4月に東京の有楽町朝日ホールで開催された“イタリア映画祭2001—90年代秀作選”で、こちらは現在全国を好評巡回中だ。そして、もう一つ、サイレントから80年代までの55本の映画を、東京国立近代美術館フィルムセンターで11月13日から2002年の2月24日まで上映する大規模な上映企画が“イタリア映画大回顧”だ。





 “イタリア映画大回顧”は“映画大国”イタリアの歴史を辿るべく企画されたもので、日伊両国の映画関係者と朝日新聞社の協議の結果、イタリア国立映画学校所属のチネテーカ・ナチオナーレが所蔵する映画作品を中心に、東京国立近代美術館フィルムセンターでの上映が決定した。
 作品選定の基本は監督別を柱にし、重要な監督の作品は1本、特に重要な監督は複数本を選び、またできる限り日本で一度も上映されていないか、かって上映されたが現在では日本で観る機会の少ない作品を選び、その中にはチネテーカ・ナチオナーレが最近製作当時の状態に近づけるべく復元作業を行った作品も最大限含むということで、作品内容のみならずその映像の状態にも期待が高まる。結果、55本の上映作品中33本が日本未公開作品、フィルム・センター所蔵の2作品を除く53本がイタリアから今回の上映のために取り寄せられる。上映作品はすべて期間中に3回の上映が行われ、全作品日本語字幕付。さらに8本のサイレント作品には、イタリアより招聘するピアニストによる伴奏つきの上映が行われるなど、当時の映画体験を再体験できるものとなっている。
 上映作品を一部紹介すると、チネテーカ・ナチオナーレが復元作業を行ったものとしては、ルキーノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』(63年)が注目だ。91年に撮影監督ジュゼッペ・ロトゥンノの立会いの元に復元作業が行われたこの作品は、92年のロカルノ映画祭での上映後も、より当時に近い色彩を求め幾度にも渡って復元作業が行われてきたものだ。また、同じく復元版で公開されるクリント・イーストウッド主演のマカロニ・ウェスタン『続・夕陽のガンマン』(66年)は、日本劇場公開時は英語版だったが今回はイタリア語復元版での上映となる。




 マルチェロ・マストロヤンニ(『男と5つの風船』(64-68年))、ソフィア・ローレン(『こんなに悪い女とは』(54年))、クラウディア・カルディナーレ(『鞄を持った女』(61年)『山猫』(63年))等日本でも馴染みの深い人気俳優の出演作は勿論のこと、日本ではあまり知られていない喜劇俳優トト(『トトのイタリア自転車レース』(48年))、やアルベルト・ソルディ(『現代の英雄』(55年))などの知られざる喜劇も多数上映される。なかには、名匠ヴィットリオ・デシーカの俳優時代の作品でヴェネツィア映画祭国民文化賞杯受賞作『ナポリのそよ風』(37年)などというコメディ作品もある。
 コメディ以外のジャンル映画としても、イタリア映画のサイレント期を代表するフランチェスカ・ベルテーニ(『アッスンタ・スピーナ』(15年))ら数本の“ディーヴァ(銀幕の女神)”映画、“サンダルもの”史劇『ヘラクレスの復讐』(60年)などの娯楽作品が、作家主義の秀作群と一緒に含まれているあたり、実に今回の大回顧の多様性を感じさせてくれて嬉しい。特にマリオ・バーヴァ監督のモノクロ画面が美しくも恐ろしい怪奇映画の名編『血ぬられた墓標』など、B級のイメージ故かこれまで一部のファン以外からはあまり顧みられることのなかった逸品の上映には、快哉を叫びたい。
 なお、上映スケジュール・料金・各作品解説は下記リンクを参照していただきたい。

イタリア映画大回顧

会期:2001年11月13日(火)〜2002年2月24日(日)
会場:東京国立近代美術館フィルムセンター

執筆者

宮田晴夫

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