26歳の若さで夭逝した童謡詩人金子みすゞ。春には舞台劇、夏にはTVドラマと彼女を描いた作品がブームを呈する状況に、その決定版として彼女の生涯を描いた映画『みすゞ』が完成し、オール・ロケが敢行された彼女の故郷山口での先行公開に続き、この秋には銀座シネ・ラ・セット他にてロードショー公開される。この作品の完成披露試写会が、7月30日に紀伊國屋書店サザンシアターにて開催された。
 本作で初の劇場用一般作品の製作に取り組んだ紀伊國屋書店代表取締役社長でエグゼクティブ・プロデューサーの松原治氏の挨拶に続き、主人公みすゞを演じた田中美里さん、従兄弟の正祐役の加瀬亮さん、五十嵐匠監督らが舞台に登場し舞台挨拶を行った。また御本人も金子みすゞの大ファンということで、本作にスチール・カメラマンとして参加された写真家、荒木経惟さんも田中さんへの花束のプレゼンターとして登場し、場を沸かせた。









 朝顔の絵柄が涼しげな浴衣姿で舞台に登場した田中美里さんさんは、「すごく可愛がっていた作品が、こうして皆さんに観ていただけるのだなと思うと、緊張しています。はっきりいって、とてもわかりずらい作品だと思いますが、とても素敵な作品に仕上がったと思います。」と挨拶した。明治に生まれ大正・昭和と生きた金子みすゞという実在の人物像に関し、「短い生涯、自分の気持ちに正直に生き抜いた方で、すごく凛とした一本筋の通った女性だと思います」と語った。また、ご自身も詩を書かれる田中さんは、最初に金子みすゞの詩を読んだ時、温かいが涙が止まらなく、その切なさに共感を抱いたそうだ。
 「僕は今回初めて大きな役をやらせてもらったのですが、監督をはじめいろいろな方に助けていただきやり通せたような気がします」と挨拶したのは、正祐役の加瀬亮さん。息を切らしながら山道を行く場面の本番前には、五十嵐監督から「一緒に走ろう」と声をかけてくれるなど、些細なことまで一生懸命付き合ってくれる監督の気持ちが嬉しい現場だったとのこと。
 『SAWADA』『地雷を踏んだらサヨウナラ』と戦場カメラマンを題材にした作品が続いた五十嵐匠監督だが、今回は女流詩人という一見これまでとは全く毛色が異なる題材の映画化。しかし「静かな中、戦っているみすゞさんを描けたと思います」との挨拶にあったように、そのテーマーはこれまでと共通するもののようだ。そしてまた、何よりこの作品の見所は「金子みすゞです。田中美里が演じた金子みすゞを観ていただければ嬉しいと思う」とのこと。その人間像と彼女を演じた田中さんの熱演は、是非劇場公開時に味わって欲しい。
 プレゼンターとして登場した荒木経惟さんは、「今、酒呑んでるからさぁ」とかなりご機嫌な様子で冗談を交えながら、舞台で金子みすゞの詩の一節を詠み、その魅力を会場に伝えた。また、スチール・カメラとして参加したファースト・シーンの現場では、早朝3時間待っても光の加減から撮影しなかったエピソードを披露。その拘りに、これはいい映画ができるだろうと確信、「金子みすゞの綺麗な眼差しというか、綺麗な気持ちになって監督と皆さんが撮ったから、綺麗な映画が出来たのではないか」と語った。

 なお、『みすゞ』は、この秋には銀座シネ・ラ・セット他にてロードショー公開される。

執筆者

宮田晴夫

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