様々な話題を提供してくれそうな映画、『インフィニティ∞波の上の甲虫』。その完成披露試写会が2001年7月31日、徳間ホールにて行われた。話題のひとつに主演であり、映画初出演となる雅楽会の貴公子・東義秀樹の起用がある。東義さんは今作の音楽も担当している。スタッフや出演者に暗いイメージを持たれたり、ふざけた人と言われたりと、頭を悩ましていました。
もうひとつの話題が、この映画は世界初の高画質HDTV-24Pフォーマット・カメラを使用しての全編撮影映画だという点。フィルムと同等質の高解像度を持つHDTV。その使用の為、非常にきれいな画面をスクリーンに映し出すことに成功している。原作はあのいとうせいこう。彼の幻想的な作品世界がどう映像化されるかも注目だ。






空を飛ぶマンタ、波の上の甲虫、南の島に降る雪・・・など美しい映像が展開するこの映画。世界初のHDTV-24Pフォーマット・カメラを使用しての全編撮影。このカメラを使用しての長編映画はこれが世界で初めてという事である。フィルムと同等質といっていいほどの高解像度を持つHDTV。今後の映画製作においての幅を広げる事となるだろう。
ちなみに今回この方法を採用した背景には、撮影場所のボラカイ島の交通の不便さが上げられる。通常のフィルムでは場所が場所だけに時間が掛かり過ぎる為だ。しかし当時は未知の素材であった為、導入は悩んだようだ。だがそこはフロンティア精神で突っ走ったという話だ。

さて、その美しい映像世界を作り上げたのが監督の高橋巌さん。『帝都物語』で特技スタッフとして参加していた、実相寺昭雄監督の最後の内弟子。今作品が念願の初監督作品である。

高橋監督「やっとみなさんに観て頂けます。こだわった点は、原作にある『南の島』で撮るというところです。一ヶ月の島での撮影はあっとういう間でしたね。俳優の方々もイメージ通りで良かったと思います」
高橋監督のその話の後、隣の東義さんからボソリと・・・、

東義「監督はイメージ通りと言っていましたが・・・、僕はあんなに暗い奴に見えていたんだなと、今初めて知ってビックリしました。」
冗談とも本気とも取れる発言の後、話は続いた。
東義「こういう幻想的で画のキレイな映画に参加できた事をまずありがたいと思います。僕は普段、ステージの上では一人で全部やります。CDなどもそうなんです。けれど、今回は歯車の一つになり、画面に写らないスタッフとも同レベルで一線になって、一つの作品を完成させるという、大人数での一体感を味わえました。それは非常に大切な経験でした。役者の経験も初めてでしたが、次はもっと上手くできる・・・と欲がでてきますね。それとこの映画は何が良いと言うと、音楽がいい(笑)。まぁそれは冗談として、最初音楽の話は無かったんですね。でも自分の中で役者としてやっているうちに、『ここはこういう曲、あそこはああいう曲』とできていたんで、準備はできていたようなもんなんです。だから何も難しいことはありませんでしたね」




続いて東義さんと同じミュージシャンでもある原田喧太さん。
原田「一ヶ月みんなと居たから家族みたいでしたね。でも実は事件がありましてね、現地の人に発砲されたんですよ、夜中海岸を走っている時に。幸い大事には至らなかったんですけど。後、監督が色々無茶な事を言うんですよ。セスナが落ちるシーンで画面に僕は写らないのに乗ってくれなんてね」
東義さんについて聞かれると、
原田「固い音楽をやってられる方だから、どんな人だろうと思っていたらこんな人でした。ふざけた人です(笑)」
東義さんと原田さんは同じミュージシャン仲間とあってか、撮影の合間にギターを弾き合ったりなどと親睦を深めていたようです。

最後は脚本の高木弓芽さん。

高木「今回撮影に同行したんですが、南の島ということもあって、みんな映画の中にいた感じでした。撮影中の台本の直しは大変でした。」

本編の公開は2001年12月1日(土)より、東京都写真美術館、新宿シネマ・カリテ他にて順次全国公開される。

執筆者

永見 憲宏

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