3月の全米公開時に、オープニング登場第一位のみならず、歴代スティーブン・セガール映画としても新記録を達成した『DENGEKI/電撃』が、8月11日よりいよいよ日本でのロードショー公開が始まる。『マトリックス』をはじめ数々のブロック・バスター大作を手掛けたジョエル・シルバーのプロデュースの元、昨年ジェット・リーのハリウッド初主演作として記憶に新しい『ロミオ・マスト・ダイ』のアンジェイ・バートコウィアック監督により撮影された『DENGEKI/電撃』は、ユーモラスな要素を感じさせつついい意味で奇を衒っていない刑事アクションの快作だ。初期の作品に近い役柄でありながら、これまでとは一味違う表情を見せるセガールに、人気ヒップ・ホップ・アーティストで『ロミオ〜』に続いての映画出演になるDMXという、異なる個性の持ち主のコラボレーションも楽しい。
 7月24日この作品の公開に先立ち、主演のスティーブン・セガールさんが来日し、セルリアンタワー東急ホテルにて記者会見が行なわれた。ご存知の通りセガールさんは、15年に渡り日本で過ごした経験を持ち、ハリウッドでも親日家としてはトップ・クラス。会場に黒の皮ジャン姿で登場すると、両手を合わせながら「どうも、こんにちは」と挨拶をした彼は、勿論日本語は堪能。ただ今回は、プロデューサーらアメリカ側スタッフも会場にいたことからか、「今日は、英語で答えるように命じられましたから(笑)」と、通訳が同席しての会見となった。それでも、挨拶や質問に答えるときに時折、セガールさんご自身による大阪なまりの流暢な日本語が話され、親しみの情があふれるアット・ホームな雰囲気の会見となった。










Q.今回もアクション映画ですが、その方向以外でやりたいことは?

「自分としては、皆さんが充分に注意を払いたいと思う話、例えば笑い、泣きそして世の中をよくするような物語性のある作品に出たいとは思っている。確かに、アクションを望む声もあるからね。

Q.今の質問に関連するかと思いますが、これまでのセガールさんの作品は善悪が際だった作品が多かったと思いますが、今回は意外な展開を見せるドラマとこれまでになかったような表情や演技が見られたと思いますが、役者としていかがでしたでしょうか?

「俳優は、当然いつも同じキャラを繰り返すのではなく、違うキャラを楽しんでもらいたい別のイメージを提供したいと思うものだよ。そういう意味で今回自分としては、沢山の実力のある俳優と共演のとプトデューサーとの仕事で、ミステリアスな部分もあって毎日毎日予測のつかないものを心がけた。それで、これまでとは違うものに仕上がったと思うし、成功していると心から思っている。」

Q.DMXとの共演はいかがでしたか?

「彼は優しく本当にいい俳優だと思う。お互いに敬意をはらいあっていたので、いい経験になったよ。」

Q.セガールさんはとてもかっこよく、私たちの子供の頃の憧れでした。でも、貴方に憧れていた日本人の男性は現在軟弱だと言われています。そうした、かって貴方に憧れていた日本の男性に何かメッセージをお願いします。

「人は誰でも時を経ていって、時代の犠牲者になる。それは、流行り廃れや価値観の置かれ方が変わったりでもだ。年寄りくさいと思うかもしれないけれど、僕自身は若い頃大変素晴らしい先生に恵まれた。彼は誇りにあふれていて素晴らしくも厳しい先生で、彼から様々なことを教わったんだ。いい先生に指導でいい影響を受ければ、やはり人格もその先生が本来求めていた姿に近づくと思うんだ。だから皆さんには、いい人に囲まれ教えてもらったことを社会に還元したいと思うように、はっきり本質を掴んで自らを開拓していく戦士になって欲しいな。」

Q.これまで、アメリカ北西部の小さな町を舞台にしたものが多かったようですが、今回大都市を舞台にしたのは何故でしょう。もう一つ、セガールさんの作品に多く参加していた(『グリマーマン』『エグゼクティブデシジョン』など)ボブ・アピーサさんが、最近映画でご一緒していないようですが?

「ボブは素晴らしい友人で、今回一緒にできなくて残念に思っている。今回の作品はカナダでロケをしているので、ユニオンの関係で彼を連れて行くことができなかったんだ。舞台がデトロイトになったのは、荒々しい街ということで選ばれ脚本にも書かれていた。特に選んだわけではないよ。」









Q.丁髷はどうなったんでしょうか?

「ジョエル・シルバーが切って欲しかったでね。ああいう警官の場合、確かに髪の毛を結んでっていうのは少ないから、納得して切ったんだよ。心境?カマヘン、髪だけですから切っても後は関係無いね。ダイジョウブ」

Q.共演された俳優にリクエストされたりはあったのですか?

「これまでは自分で付け加えられるものをということで、意見を言ったりすることが多かったが。今回の作品はジョエルの作品だと思っている。メインのプロデューサーであるジョエルのリクエストの下、自分がプロの俳優として雇われたことは納得していたんで、それでいこうということになったっだ。確かに、別のケースならもっと自分の意見を出すかもしれないがね。」

Q.原作は、原作者がセガールさんを主役に想定して書かれたものだそうですが、セガールさんが参加するにあたって最も気にいった点はどこでしょうか?

「人の人生には、白黒がはっきりするなんてことはない。権威を持っている者が、欠点を持ち立場を悪用することもあるわけで、素直に割り切れずいろいろな見方が出来ることが描かれているので、この映画に惹かれたんだ。」

Q.5年ぶりの来日の印象とファンへのメッセージをお願いします

「公式には5年ぶりですが、自分では毎年のように来日しているんだ。その中では、この五年間はいい方向に変わっていると思うけど、少し気になる部分もある。僕が最初に来日したのは30年前のことだけど、その頃に比べると日本の伝統や宗教、文化を守っていこうとすることが少しづつ軽んじられている気がします。(以下、本人の日本語)
まぁ、兎に角その文化伝統を守ることが一番大事なのを若い人にね、どういう仕事、どういう道があろうかをね、自分が何処から来たかということを忘れずにね、日本の文化伝統を守ることが一番大事だと思います。」

Q.日本はこの夏猛暑なんですが、皮ジャン姿は暑くないですか?日本語でお願いします。

「あの結局ジョエル・シルバーがね、映画に来ていた物をね、こういうインタビューされるときに、そういうものを着てたら嬉しいと、おっしゃったからさ。(と、セガールさん皮ジャンを抓み胸を仰ぐジェスチャーでおどけてみせる)」








Q.メジャー系の作品では、久しぶりの出演になるのではないかと思いますが、充電期間を取られていたということでしょうか?また、CDを出されたそうですが、そのことをお聞かせください

「人間はしばらく同じことをやっていると、やはり休みをとりたくなるものだと思う。それで、僕もしばらく休養ということで映画から離れていたんだ。その間は世界を回り精神面や宗教面での先生方から教えを受け、またチャリティ活動等を行なっていたんだ。CDは出したよ。50年代からのアメリカン・ブルースが大好きで、できたら音楽活動も第ニの故郷日本でもやって行きたいと思っている。CDはこれから日本でも発売になると思うけど、ヴォーカルもギターもやっているんだ。」

Q.二人のお子さん(剣太郎セガール、藤谷文子)が俳優として活躍されていますが、同じ俳優として、また父親としてどのように思われていますか?

「本当は自分にとっての最悪の敵にだって俳優なんかになるのはやめろと言いたいところなんだけど、二人が選んだ道だしそれが二人にとって幸せならば、どんなことがあってもサポートして行きたいと思っている。私はあの二人が、神の贈り物の中でも最高のものだと思っている。娘はずっと自分と一緒にいてくれたし、剣太郎とも今日会うんだ。勿論文子ともね。」

Q.セガールさんはいつも劇中でガバメントをちょっと改造した拳銃を使われてますが、今回は違っていたようですが、その選択の理由は?。また貴方の、プロフィールにはCIAでの仕事に携わっていたと書かれていますが、本当でしたら国家機密に触れない程度に教えてください。

「CIAで働いたことはないんで、国家機密を話すことはできないね。今回の銃は45口径で、あれは自分が特注で作ったキャスト・ピンをコピーしたものを使ったものだよ。」

 なお、『DENGEKI/電撃』は8月11日より渋谷東急3ほか全国松竹・東急系劇場で、ロードショー公開される。

執筆者

宮田晴夫

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