1960年代に横山光輝原作の漫画、及び特撮を駆使したTV版シリーズ版が一世を風靡した忍者ヒーロー活劇『仮面の忍者赤影』が、この夏全く新たなNINJYA MOVIEとして参上する。『SF サムライ・フィクション』で独自の映像センスを見せた中野裕之監督の本に、フレッシュな若手から個性的な実力派まで日本映画界を代表する多彩なキャスト陣が集結、新世紀に相応しい斬新なアクションで描いた『RED SHADOW 赤影』がいよいよ完成。8月11日からのロードショー公開に先立ち、7月23日に中野監督をはじめ出演者の安藤政信さん、村上淳さん、竹中直人さん、奥菜恵さん、舞の海秀平さん、陣内孝則さんが出席し記者会見と特別披露試写会が開催された。
 『RED SHADOW 赤影』は、2年前に東映50周年企画としてスタートし、伝統にうらうちされた東映京都撮影所にて、既成の時代劇にとらわれない新世紀流NINJYA MOVIEを目指し、長期間の撮影を敢行した大作だ。この日の特別披露試写会の模様は日本映画界初の試みとして、スカイパーフェクTVの東映チャンネルにてノンスクランブル・ライブ中継が行なわれたほか、渋谷Qフロント、京都・新風館、大阪とんぼりステーションの巨大な街頭ビジョンや、同時刻に披露試写が行なわれた東広島と新潟万代の東映のシネコンT・ジョイでも同時ライブ中継が行なわれるなど、画期的なイベントとなり、この話題作を広くアピールするものとなった。










 本作は、横山光輝氏の漫画『仮面の忍者赤影』をベースにしながらも、原作やTV版以前のエピソードを描く瑞々しい青春NINJYA映画とでもいうべきものを目指したもの。誰も見たことの無い作品づくりを目指し中野裕之監督は、日本映画始まって以来の2300カットという膨大な撮影を行った。これは、通常の作品の4倍、カット数が多目のアクション映画の2倍以上にのぼる。東映本社にて開催された記者会見に、トレードマークのテンガロン・ハット姿で登場した中野監督は、「狂っているというしかないくらいのカット数ですが、音楽的で楽しく、可愛く、かっこよく、さわやかな映画ができたと思います」と、完成した作品への手応えをうかがわせた。
 若々しくピュアな主人公赤影を演じているのは、安藤政信さん。「自分が思っていた以上にかっこよく撮ってもらっていて、中野さんを信用してついてきてよかったと映画を観て思いました」と語った安藤さんは、『SF サムライ・フィクション』を観て以来中野監督の映画に出たいと思い続けていて、また中野監督も今回は安藤さんを念頭において赤影というキャラクターをつくったそうだ。まさに、両者の思いが最良のタイミングでマッチしてのコラボレーションとなったようだ。
 赤影の盟友青影を演じたのはリラックスしたランニング姿で登場した村上淳さん。「是非、お子様連れで来ていただけるとご満悦いただけるかと本当に思います」と挨拶した村上さんは、長期の撮影で子供へのホームシックを苦労にあげる子煩悩ぶり。この日の披露試写には、お子さんも観に来られていたそうだ。
 影一族の頭領として若き3人の忍者を指導する白影役は、中野監督とは古くからの盟友である竹中直人さん。今作の中ではいつもに比べ気持抑え目の演技をみせていたが、記者会見と舞台挨拶中は陣内孝則さんとお互いつっこみを入れあって、会場を爆笑でつつんでいた。しかし、始終冗談を交えながらも撮影で苦労した点を問われ「好きでやっている仕事なんで、苦労はあまり感じないです」と、さらりと答える姿は流石ベテランの貫禄だ。
 祖父亡き後男として領民を束ねようとする琴姫に扮したのは奥菜恵さん。「撮影は本当に楽しい毎日でした。私も先日初めて出来上がったものを観ましたが、映像が本当に綺麗でとてもかっこよく出来上がっています」と挨拶した奥菜さんは、挨拶等のたびにすらりと立ち上がり真摯に会場に向かい答えていたのが印象的だ。
 影一族と闘う根来忍群の力丸で映画俳優デビューを果したのは、舞の海秀平さん。悪役といいながら、優しいところや楽しいところのある幅広いキャラクターで楽しく演じることができたそうだ。なお劇中で、琴姫を担ぎ上げる場面は、「意外と重くてか、自分の体力が衰えてか、スムーズに軽々とはいかなくて」という舞の海さんの言葉に、奥菜さんが「すみません」と苦笑してしまう一幕も。
 悪事の黒幕となる竹之内基章を演じたのは、陣内孝則さん。今回の演技に関して、「若い皆さんがニュートラルな素晴らしい芝居をしている中で、僕らがくさい芝居をしていやだなというのがありましたが、今回はこれまでの清純派俳優からの脱皮ですから(笑)」と話すと、竹中さんが愛情がこもり辛辣な突っ込みを再三入れてヒートアップされていくのであった。











 記者会見に続き丸の内東映で開催された特別披露試写会は、なんと、朝の6時くらいには一番乗りのお客さんが劇場前に到着し、午後3時過ぎには劇場前にかなりの長さの列ができるなど、作品への期待と人気の高さを見せつけていた。ロビーの一画には東映チャンネルの放送用ブースが設けられ、開演前のひと時にも、そこからインタビューやレポートなどが随時放映された。そして午後7時20分過ぎ、
暗くなった場内に音楽が鳴り響くと、舞台からは大量のスモークが噴出され、レーザー光線が闇を切り裂く。そして、スクリーンには“RED SHADOW”の文字が映し出され、いよいよ舞台挨拶の開幕だ。若い女性を中心に満員の場内に歓声が湧き上がる中で、記者会見に出席した7名が舞台中央へとすすみ一言ずつ挨拶を行なった。
 「忍者ムービーですが、最後は気持ち良く観ていただけるものだと信じている。何度も観れるような作品ですから、何度も劇場に足を運んでください」と挨拶した中野監督。この作品はサラウンド効果を十二分に考慮して作った作品なので、なるべく中央で楽しむことがポイントだとも付け加える。少し照れながらも「赤影参上!」のキメ文句で場内を沸かせた安藤さん、そして「子供共々楽しめる作品に出れて幸せです」と挨拶した村上さんは、実は安藤さんの「赤影参上!」の仕掛け人…というかたきつけた張本人とのことだが、本当にやるとは思っていなかったと、舞台挨拶中驚きで放心状態!?。
 舞台に登場した時も、思いっきりこけてみせエンターテイナーぶりを発揮した竹中さんは、舞台挨拶中もマイクを握った小指を立てる十八番の仕種で、「本当に最高の現場で夢のようで、もう加山雄三の気分ですよ。京都だから海は無いんだけど、いや参ったね(笑)」。
 寒かったけど楽しかった現場を振り返りつつ奥菜さんは作品について、「すごくかっこいい部分と、癒される部分とがあります」と、中野監督らしい自然描写をポイントとしてあげる。この二つの部分が作品微妙に絡み合うことによって、ただ目まぐるしいばかりのアクション作品とも一線を隔す作品になったようだ。「親方って相撲部屋の親方みたいに怖い人かと思っていたが、楽しい人でした。」とは、無我夢中のうちに撮影が終わったという舞の海さん。そして、陣内さんは、こちらの舞台でも“清純派からの脱皮”をまたまた宣言、そのキャラを巡り竹中さんとの仁義なきバトルを繰り広げるのであった。
 挨拶の後は、東映チャンネルの特別番組の進行役であるやるせなすのお二人が、舞台にあがり笑いを交えての質問タイム。この質問は、東広島・新潟万代で同時中継を見ている試写会参加者から寄せられたものという多元的な構成だ。ここでも作品に参加するためのトレーニングとして、“熊と戦った”陣内さん&“タツノオトシゴと会話をした”竹中さんの、濃ゆいトレーニング自慢が場をさらっていたことは付け加えるまでも無い(笑)。
 そうこうするうちに舞台挨拶も終わりに近づき、最後は安藤さんが最後を締めることになった。観客に向かい神妙な表情を見せた安藤さんは一言「赤影退場」(場内爆笑)。

 なお、『RED SHADOW 赤影』は、8月11日(土)より、全国東映系劇場にてロードショー公開される。

執筆者

宮田晴夫

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