平凡な一教師が原爆を作ってしまうという仰天アイディア、実際のデパートを使って撮影された群集シーン、10数台のパトカーとの公道でのカーチェイスなど、日本映画離れしたスケールの『太陽を盗んだ男』。出演に沢田研二と菅原文太の二大スターを起用。この伝説的傑作カリスマ映画のDVD化が決定した。その製作記者会見が行われ、監督の長谷川和彦がゲストとして来た。
当時のことを思い出してもらい、様々な裏話を聞くことができた。アイディアの出所、異色な主人公を創作した謎、当時人気絶頂のアイドルでもあった、ジュリーこと沢田研二の起用の秘密などをお届けしたい。






今やレンタルビデオ店でもなかなか見つけることの難しくなった監督・長谷川和彦、出演・沢田研二、菅原文太の伝説的映画『太陽を盗んだ男』。そのDVD化が決定し、これでまた、このカリスマ的傑作が世に甦ることとなった。
その長谷川監督を招いての記者会見。そこで当時の様々ないきさつを聞くことができた。

——まず、今回のDVD化について一言何かお願いします。
えー、これが映画の製作記者会見ならばもっと嬉しかったんですが・・・、とはいえこれはこれで、嬉しいことだと思っております。ええ。まぁ、ずいぶん高画質の映像に仕上がっており、驚きました。原板もこんなにキレイだったんだと思いましたし、映画の中身についても、久しぶりに見て、うん、オモシロイじゃないかと自分で思いました。今ではこの作品、ビデオ屋さんにもなかなか置いてないようで、若い方がこれを観てどう感じるかが、不安でもあり、興味があるところでもあります。当時は話題にはなったんですが、思った通りの興行が伸びませんでした。その事と、長い間映画が撮れない事とは、残念ながら関係があるようです。これでDVDがバカ当たりして、『長谷川にもう1本くらい撮らせてやろう』となると嬉しいのですが。

——原爆を個人が作ってしまうというアイディアは誰が?
アメリカ人のライターで、レナード・シュレイダーてのがいましてね。高倉健さんが出演した『ザ・ヤクザ』で脚本を書いた人なんですが、『タクシー・ドライバー』の脚本家ポール・シュレイダーの弟にあたります。あれはお兄さんと二人で書いて、小説とシナリオを後で分担して書いたものだという事です。僕がロスに行った時に、その彼と仲良くなりましてね。その時に僕が広島の生まれで、体内被曝という生まれ方をしている事なんかを話したんです。その事と、向こうの雑誌の『アサシン』というものの中に、個人で原爆を作る内容のようなものがあったと。それらからインスピレーションを受けて、彼があのアイディアを得たという事です。






——当時は主人公に感情移入しやすいように、その人物の主張があったりしますが、この映画の主人公にはそれが無いように思えます。それが乾いた面白さに繋がっていくようですが、どういう意識でそれを?
モデルが無い主人公ですのでね。こいつは一体どういう奴なんだ?と僕自身思っていました。最初の脚本ではその辺りの説明がありしました。ただそういうのが具体的になると、話が小さくなる。だからそういうのヤメました。それで、一体お前は何がしたいんだ?という質問自体がテーマになっています。

——なぜ沢田研二さんを起用したんですか?
最初は無名の新人でいこうとしました。でも主人公の設定が教師で30に近いとなると、実際30歳で無名の新人はいないんです。しかも東宝の秋の大作に無名の新人はちょっと・・・と。そこで有望な新人は?となり、助監督(ちなみに助監督の一人にあの相米慎二がいた)が『ジュリーはどうです』と言ったので、会ってみたんです。まぁ当時絶頂のアイドルで、スケジュールが空いている訳などないだろうと思っていましたが。しかし、彼がダイナマイトじゃつまらないけど、原爆ならバカバカしくて面白いと二つ返事で了承してくれたんです。じゃあ、ジュリーでいくか!となりました。ただ、正直不安もあり、果たしてジュリーがジュリーで無くなれるだろうか?と思いました。ところが70点くらいやってくれればいいやと考えていたところ、多少仲間を誉める事になりますが、120点やってくれましてね。主人公のキャラクターに血肉を付け、リアルだけどファンタジックな人物を演じてくれましたよ。

DVDの発売は2001年9月21日に決定しており、特典でメイキングなども付くということです。
まだご覧になっていない方はこの機会に是非。

執筆者

永見 憲宏

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