第9回フランス映画祭もいよいよ最終日。この日最初の上映作品となったのが、『8月15日(原題)』。この作品は、フランス中がリゾート・シーズンになる8月。突然の休暇宣言で姿を消した妻達に、うろたえる3人の夫たちの姿を描いたコメディで、リュック・ベッソン監督作品のメイキング・ドキュメントを撮ったパトリック・アレッサンドラン監督の劇場用作品の2作目となる。




今回の作品でプロデューサーをつとめるのは、メイキングを撮った縁もあるリュック・ベッソン。舞台に立ったアレッサンドラ監督は、ベッソンさんのプロデュースに関して「彼は、映画業界を熟知しているから、我々にガイド的なことや距離をとって外から見ることを教えてくれたんだ。撮影現場にきたのは3回くらいで、作品に関して監督を尊重してくれるんだ。」と答える。ベッソンさん自身も監督であることから、クリエイティヴな部分の判断は、監督に委ねてくれるタイプのプロデューサーなのだとか。
 作品の主役は、タイプの異なる3人の夫たち。彼らをキャスティングする時のポイントなどは、どうだったのだろう?この作品の3人の夫たちは、妻同士は仲がいいが自分たちは相手のことをほとんど知らなかったという設定だ。このため映画と同様に、フランス映画界で互いに仕事をしたことがない違うタイプの3人を選んだという。実際、一人は商業映画、一人は作家性の高い映画そしていま一人は演劇を中心に活躍している俳優といった顔合わせで、これが映画の中での互いをほとんど知らない3人が、徐々に関係を深めて行き…という展開にはまっていく。三人の演技を最大限生かすためにも、カメラワークに注意し、音楽も監督曰く「俳優に次ぐ4番目くらいの素晴らしさ」だそうで、役者に合わせた歌詞がつけられていたとのことで、日本語字幕がなかったのは、監督ならずとも残念。
 ところで、本作では物語のきっかけとなる3人の妻たちが最後まででてこない。妻達が戻ったことを提示しながらも、直接対決は最後まで無いけれど、余韻を感じさせる描写で幕を閉じる。このことに関してアレッサンドラ監督は、男女の間の“ちょっとした休憩”…距離をおくことによって、安息の後にいなくなった者の大切さを実感させたかったという。男しかいないという突き放したような状態にも関わらず、そのもたらす結果はなんともフランス映画らしいロマンチックさではないか。最後はアレッサンソラ監督の「ドウモアリガトウ!」の言葉でティーチ・インの幕を閉じた。(宮田晴夫)

執筆者

宮田晴夫

関連記事&リンク

第9回フランス映画祭2001横浜