今年のフランス映画祭では、日本映画の最新作が上映された。日仏の映画交流を記念してのこの試みに選ばれた作品は、昨年の『ユリイカ』に続き2年連続でカンヌ国際映画祭のコンペ部門出品の快挙を成し遂げた青山真治監督の『月の砂漠』だ。上映に先立っての舞台挨拶では、斎藤フランス映画祭横浜受入委員会会長、ユニフランス・フィルム・インターナショナル会長のダニエル・トスカン・デュ・プランティエさん、そして第9回フランス映画祭横浜代表団団長のナタリー・バイさんらも作品祝福に駆けつけた。フランス映画祭で観たジャン・リュック・ゴダール監督の『JLG/JLG』が、ご自身の映画をつくり始めたきっかけだという青山監督は感慨深げな様子で、「日本では今後、これほどの大きさのスクリーンに正確なサイズで『月の砂漠』が上映されることがあるかどうかはわからないので、フランスという映画を大事にする国ならではの地からだと感謝しています」と挨拶した。以下、作品上映後の青山真治監督へのティーチ・インの一部を紹介しよう。







Q.編集で1時間ほどカットされたそうですが、その中にお好きなシーンはあったのでしょうか。また、ディレクターズ・カット版がいつかは観れるチャンスがあるのでしょうか?

「監督がカットしていくシーンは、大抵ひじょうに愛していて切るのがとても辛いのと同時に、もう二度と見たくないと思える両方あると思います。毎回そうした中で消えていくシーンはありますが、今回に関しては本当に泣く泣くというシーンばかりでした。どれとは言えませんが、カットしたシーンも今あるシーンも両方とも大好きです。それらは、なんらかの事情で消えていったということだと思います。ディレクターズ・カットや完全版は、僕にとっては何故あるのかわからないといったものなんです。公開されたものがベスとであると思いますので。まぁ、将来的に自分以外の誰かの意図で、そうしたものをやる可能性があるかもしれませんが。

Q.映画とビデオが手を取り合っているような印象を受けるなど、新しい感覚の作品だと感じました。監督は、映画とビデオの親和性を模索していこうと考えられているのでしょうか?

「映画とビデオの違いを考えると、今皆さんがいらっしゃるように様々な人が一度に同じものに視線を投げかけられる映画と、一人ないし二人ぐらいの視線を受けるビデオといった違いくらいしか感じません。そしてなおかつその違いが非常に大きいと思うのです。こうして皆さんが、暗闇の中で一つのものを観る状況の力と一人で見ることの違いについて、ただ一人で見る人についてを、皆さんで見つめ考えることは必用ではないかという気がします。それで、あの状況を描いたのです。

執筆者

宮田晴夫

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作品紹介
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