「映画に出てた頃よりは、ちょっと大きくなっちゃったね」。パスカル・トマ監督は、フランス映画際横浜2001に今年11歳という最年少ゲストとして参加している愛娘ヴィクトリア・ラフォーリーさんを紹介すると、素敵な笑顔を見せてくれた。ナントの街で、休日である水曜日を思い思いに過ごす子供たちと、こちらも様々な種類の大人たちを描いた群像劇が『水曜日は大忙し!』だ。ラフォーリーさんをはじめとする、天真爛漫な子供たちのイキイキとした姿からは、偉ぶってみせてみてもどこか滑稽な大人たちへのエールが贈られているようだ。映画祭での本作品上映前の時間に、ラフォーリーさんを同席されたトマ監督に、映画と子供たちについてを中心にうかがってみた。




監督の作品のうち、日本で公開された作品は『上級生』、『夫たち、妻たち、恋人たち』そして本作と、子供が大きな要素を占めているようですが、監督の中で子供たちを描くことへの拘りや思いに関してお聞かせください。

パスカル・トマ監督−−子供だけを扱っているわけではないけれど、確かに扱っていることは多いね。それは、子供が大人を見る目というのに興味があるんだ。そう、彼らはかなり真面目に大人を見ているので、大人たち…去っていく古い世代をどのような目で見ているのかというのが面白いと思うんだ。大人を見ながら、果たして自分はこのようになっていくのだろうか?と思いながら見ている子供たちを扱うのは面白いよ。それから、無意識に活き活きとして力強いもの表現できるものを探していたので、それを表現できるのはやはり子供たちの世代だということで、子供たちを扱っているんだ。子供たちは、両親や大人よりも力を持っていると思うし、大人は叶ったにしろ叶わなかったにしろ持っていた夢を今はちょっと見失っているような状態だと思うので、意識せずに力強いものを表現できるのはやはり子供じゃないかと思うんだ。子供を扱ってはいるけれど、子供から両親、彼らが住んでいる街、国ひいてはフランス全体の社会を映し出していけると思うよ。小津安二郎監督の『秋刀魚の味』と同じような感じ…過ぎ去っていく時を表現することで今のよさを表現した映画だと思いますが、同じようなことを表現したかったんだ。

ラフォーリーさんをはじめ子供たちが本当にイキイキと演じられていてとても楽しい映画でした。ラフォーリーさん、トマ監督の『La dilettante』に続いての出演とのことですが、多くの子供たちはほとんどの方が初めてだったのではと思いますが、そうした子供たちに演技指導されるにあたり、大変だった点やエピソードなどありませんでしたか?

パスカル・トマ監督−−初めて映画に出る俳優たちを扱うということは、いつもやってきたことで、最初の作品では70人が出演したけどプロは一人だけだったよ。それが難しいことではといわれるかもしれないけれど、私にとっては優しいことだよ。走ることが難しいと思う方もいれば、簡単だと思う人もいるのと同じことだよ。ただ、俳優たちを選ぶことに関しては、なるべく子供たちが鸚鵡返しのように台詞を言ったり、きちんきちんと台詞を言うというのではなくて、いつも話してる言葉で話せるように持っていったんだ。作中で3歳の子供が出てくるけど、彼とは撮影前に散歩をしたんだ。歩きながら、話しをしたんだけど、自分が指導したいことが、繋いだ手を通して伝わっていくような感じだったよ。特に彼には、彼が手にしたウサギの人形のことを考えてあげてねと言ったところ、ウサギを通して彼は自然に言うべき、答えるべき台詞を言ってくれたんだ。

ヴィクトリアさんは、お父さんの作品に二本続けて出演されたわけですけど、これからも役者としての道を進まれるのでしょうか
ヴィクトリア・ラフォーリーさん−−これからも出たいとは思いますが、職業としてはやりたいとは思っていないです。
パスカル・トマ監督−−ダンサーの振り付けになりたいそうだよ。

今日は、どうもありがとうございました。

なお、『水曜日は大忙し!』は、このインタビュー後の映画祭正式上映のほか、横浜市内の児童・生徒をを対象にした市民特別招待上映会として、6月23日に行なわれる【子供のためのフランス映画】での上映作品にも選ばれている。

執筆者

宮田晴夫

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