伊藤潤二原作のホラー・コミックを、閉ざされた異界ともいうべき村落を舞台に、人間の情念と魔が結びついた時に起こる恐ろしくも悲しい物語として映画化した鶴田法男監督の『案山子/KAKASHI』のレイト・ロードショーが、6月15日の渋谷シネパレスでの上映を皮切りにスタートした。
 ウィンドーに、劇中で使われた滑稽でありながら不気味な案山子のダミー・ヘッドも展示されている渋谷シネ・パレスでは、公開初日の15日に鶴田法男監督とヒロインかおる役で主演した野波麻帆さんが来場し、初日舞台挨拶が行われた。この作品の撮影が行われたのは昨年の11月ということで、撮影から数ヶ月を経ての公開にお二人とも感無量の様子で、作品について語った。










 既にOVを中心に長いホラー監督としてのキャリアを持つ鶴田法男監督にとって、『案山子/KAKASHI』は2本目の劇場用ホラー映画となる。そんな本作について鶴田監督は、「10年間ホラーものを撮ってきましたが、今回は今まで拘ってきた人間の愛憎を基本的なベースに作った作品です。ホラーではありますが、人間の心の闇の部分を描いた作品ですので、そのあたりをわかっていただければ」と語る。確かに今回の作品は、鶴田監督が愛する怪奇映画へのオマージュ場面を盛りこみつつも、ヒロインかおるを中心とするキャラクターの想いが、丁寧に描かれていく。

 映画を中心に活躍する野波麻帆さんにとっても、本作のかほる役は事実上の初主演。ホラー映画は大の苦手と話す麻帆さんだが、「今回ホラー映画を演ってみて、あまりこれまでの作品とは変らなかった感じなのです。ただやはりホラー作品として、その怖さをどう持っていき持続させていくかという点は難しかったですが、現場はすごく明るくて楽しかったですよ」と、撮影現場をふりかえる。なんでも、スタッフやキャストが疲れて来た時には、それぞれスキップをして笑顔を絶やさない現場だったらしい。また、本作で共演した柴崎コウさん、グレース・イップさんのお二人に関しては、「コウちゃんは、大ファンだったんですが一緒のシーンが3場面くらいしかなくてあまり話せる機会がなかったんです。でも、出来あがった作品を観て、やっぱりコウちゃんはいいなぁとますますファンになりました。グレースは、さすがに香港で色々な経験を積んでいるだけあって意欲があって、一緒にやっていてテンションが上がるんです。一緒に演ってよかったなと思える二人でした。」と語る。なお、写真集の発売、公式頁のオープンなどの活躍が続く麻帆さんだが、メインはやはり映画で行きたいということで、現在撮影中の新作の後も映画の予定が続くそうだ。こちらも楽しみにしたい。

 舞台挨拶の最後はやはり、鶴田監督から。「野波麻帆の初主演作であり、それを僕が撮れたことを光栄に思っています。また、柴崎コウ、グレース・イップという新進女優二人を迎えて三人競演の映画が作れたことは、今思うと夢のようでした。三女優の競演を楽しんでいただければと思います」と、多くの観客が詰め掛けた客席にメッセージを語り、舞台挨拶を終えた。

 なお、『案山子/KAKASHI』は、渋谷シネ・パレスでは夜9時10分から、また新宿ピカデリー4では夜9時20分からそれぞれ1回、レイト・ロードショー公開中。

執筆者

宮田晴夫

関連記事&リンク

作品紹介
『野波麻帆写真集 脱輪』発刊記念握手会開催!
鶴田法男監督ページ
野波麻穂オフィシャルホームページmaho-maho-mango