ジュゼッペ・トルナトーレ監督「マレーナ」は少年を知らずと狂わし、街中の男と女を知らずと狂わせ、自らの運命も狂わせてしまった一人の女性の物語だ。「ニュー・シネマ・パラダイス」、「海の上のピアニスト」を贈り出したトルナトーレの、少年時代の恋の記憶がベースになっているという。監督のミューズの象徴であるタイトルロールを演じるは“イタリアの宝石”の異名を取るモニカ・ベルッチ。「台詞はほとんどなかったから監督と秘密の台本を作ったの。内省的なモノローグばかりのね」。このほど、公開目前にして主演女優が来日。6月4日、新宿パークハイアットで行われた会見にはマスコミが入りきらないほどの盛況となった。花束贈呈に駆け付けた別所哲也がただ呆然と見とれるだけ、の微笑ましい場面も。
(撮影:中野昭次、永見憲宏)
※「マレーナ」は6月9日、全国松竹・東急系にてロードショー




——トルナトーレ監督から熱心なオファーがあったそうですが。
監督との仕事は私にとっても夢だったわ。演技指導は正確で細かく、何をどのように撮るのか、完璧にイメージできてから役者に指示を出す人だった。
 この物語は監督自身の少年時代の体験がもとになっているの。若い頃に年上の女性に憧れていて、随分大人になってから“あの時、好きだったんです”と告白したらしいわ。

——マレーナは劇中でほとんど口を開きません。台詞が少ないことに不安を感じませんでしたか。
ええ、台本を読んだときは心配だった(笑)。言葉が少ないのに、どうやって魅力的な女性にすることができるのかしら、とね。実は監督と相談し、秘密の台本を作ったの。実際に使われることはなかったのだけれど、それは内省的なモノローグが散りばめられたものだったわ。2人で考えたモノローグが演技に役だったのはもちろんだけれど、一番大切にしたのは眼差し。そして肉体の表現。ラストでマレーナの歩き方が変わってると思うけど、あれも監督のサジェスチョンだったわ。監督の指示に従い、私は粘土のオブジェのように自分を変えて行ったのよ。

——マレーナという女性をどう思いますか。
マレーナのようにイタリアの40年代を生きた女性を演じるのはむつかしいこと。この時代の女性はアイデンティティを持つことは許されず、男性あっての存在だったの。マレーナもその時代女性同様、一見、受け身に見えるけれど、彼女は自身と戦う姿勢を持っているの。リンチにあって尊厳を失った場所に再び戻ってくる、己に克とうとする、そうした姿が魅力的だと思うわ。





——集団ヒステリーの極みというのか、リンチの場面はショックでした。あの場面はつらい撮影だったのでは。
 あの場面の撮影が終わった後、少年役のジュゼッペが近寄ってきてこう言ったの。『こんなすごいことして恥ずかしくなかったの?』って(笑)。確かにきつい場面には違いなかったけれど、女優として取り組む分には抵抗は感じなかった。

——ソフィア・ローレンの再来と言われることについて。
 大好きな女優よ。自分が演技を始めたのもソフィア・ローレンのようになりたかったから。彼女が演じたようなヒロイン像——を私もいつか演じてみたいわ。

——次に仕事をしてみたい監督や俳優はいますか。
仕事をしたい人はたくさんいます(笑)。ここで名前をピックアップするのは仕事を限定してしまう気がするのでやめておいたほうがいいかも。
作品の選別基準はニュージェネレーションに属しているもの。新しい才能、質のいい監督の作品に惹かれるの。今回のトルナトーレ監督もそうだったのだけれど(※2人は「ドルチェ&ガッバーナ」のCMを通じて知り合った)、別の出会いから始まるパターンが多い気がするわ。

執筆者

寺島まりこ

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