14日間に渡り、シネマライズ渋谷で上映された「新藤兼人からの遺言状」。全21作品のラインナップはもちろん、日替りゲストのトークショーも好評だった。最終日の25日は新藤兼人監督と、実孫であり映画監督としてデビューしたばかりの新藤風さんの対談が行われた。処女作「LOVE/JUICE」はベルリン国際映画祭の新人賞を受賞。「僕が誉めたって変だけどこの映画、基本がしっかりしています。映像で見せる部分、主観の部分とね、バランスがいい」(新藤兼人)。祖父から孫への遺言状のようなムードが漂うものの、「特集タイトルは僕がつけたんじゃない(笑)。悪気はないんでしょうが、まだ先があると思ってますよ(笑)」と語る御前だった。





「小学生の頃から映画監督になりたかった」という風監督。映画監督の祖父、近代映画協会社長の父と文字通りの映画一家だが「ふうちゃんは小さい頃から映画の話聞いてたからねェ。無意識のうちにそうなったというのか、志しをもってやりたかったわけではないでしょうね」と祖父は言う。とはいえ、孫の実力には一目置いているようで最初に見せられたシナリオも「完成度は高かった」。全体がバランス良くまとまっていたため、アドバイスするような“失礼なこと”は避けたとか。
 「LOVE/JUICE」はつんくタウンにスポンサードされ、1千万円の製作費で完成。第51回ベルリン映画祭フォーラム部門新人作品賞を受賞した。映画評論家の西村雄一郎氏いわく「女性の視点というのか、独特の触感的な演出がいいですね。説明を省き、映像で見せようとするところが、新藤兼人監督のお孫さんならでは」。これを受けた新藤兼人監督は「自分がよく知った世界じゃないと人に訴えることができないからね。実生活に着目したところが成功だね」。現在、次作を準備中とのことで今後の活躍にも期待が掛かっている。

執筆者

寺島まりこ