今夏シネマライズ公開の「王は踊る」(ジェラ—ル・コルビオ監督)でルイ14世を演じたブノワ・マジメルが来日した。マジメルは2日前、カンヌ映画祭で最優秀主演男優賞(「ピアニスト」)を受賞したばかり。「同じ作品が3つも賞を取ることはカンヌでは異例なこと。この受賞が役者としての人生を鼓舞してくれるものになると思う」と語ったが、ひたる間もなく日本へ飛んだだけに、23日、東京日仏学院で行われた記者会見ではいささか緊張した様子。花束贈呈に現れたデヴィ夫人に「あなた、マジメルだけにまじめすぎるのよ」と言われ、苦笑する場面もあった。




−−劇中でバロックダンスを披露しますが、ダンス自体が初体験だったとか。
  この映画のために3ヶ月間、訓練したけれど、思ったよりずっと大変だった。一般的なバロックダンスのイメージといえば優雅で女性的、というものだと思う。僕もそう思っていたのだけれど、実際にやってみると男性的でむしろ戦闘的であるとすら感じたね。

−−歴史上の人物を演じる難しさについて。
  実在した人間を演じるのは「年下の人」についで2度目。前回、ミュッセを演じた時は自分が集めうる限りの資料・文献に目を通したよ。けれど、それに縛られすぎて不自由になっていく自分を感じ、撮影の直前には資料を全て片付けて、真っ白な気持ちでシナリオを読み直した。 
 今回の「王は踊る」は、どうしたかというと、ルイ14世の子供時代を中心にやっぱり資料には目を通した。彼の子供時代を理解すれば、ああした君主的な存在になったは何故なのか、掴めると思ったんだ。

−−出演作品のチョイスは。
  僕はさまざまな作品を旅することをしたい。今まで選んできた作品が、次に選ぶ作品、次に旅する別の世界へ導いてくれるように思う。撮影中にその作品とは別物の、違う世界が広がっていくんだ。これまで出演してきた作品はそんなチョイスのつながりだと思う。




−−ジュリエット・ビノッシュはじめ、ジャンヌ・モロー、イザベル・ユペール、ナタリー・バイほか、フランスを代表する名女優との共演が多いですね。
 演技する側から言うと、有名、無名であるなしは余り関係なく、役にどれだけ入り込めるかということの方が重要。よく大女優を相手にしてプレッシャーはないのかと聞かれるけど、プラスになる部分のほうがずっと大きい。彼女たちはプロ意識が強いうえ、寛大さも備えているんだよ。

−−「ピアニスト」でカンヌ最優秀男優賞を受賞しました。今の気持ちを。
 カンヌで同じ作品に3つも賞が与えられること(グランプリ、主演女優賞も受賞した)は異例なこと。その例外的な賞を自分がもらえたことはとにかく嬉しいに尽きる。翌日には日本に発ったので、喜びをかみしめるような時間はなかったけれど…。
12歳で演技を始めて、今年で27歳。役者として、この先にも長い時間が残されている。今後の自分を鼓舞していく、勇気づけになるものと思っているよ。

執筆者

寺島まりこ

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作品紹介
第9回フランス映画祭横浜2001