仙頭武則プロデューサー、青山真治監督コンビが「EUREKA」に続き、今年もカンヌに出陣する。三上博史、とよた真帆主演の「月の砂漠」は一組の夫婦を軸点に家族であり続けることの難しさを描いた作品だ。第54回カンヌ国際映画祭での公式上映は5月18日。同月6日には東京プリンスホテルで緊急記者会見が行われた。“行くからには賞を狙いたい”と緊張気味に語る仙頭プロデューサー、青山監督とは対照的に“行けるだけで幸せです”と満面の笑みで答える三上博史とよた真帆。カンヌ入り直前、臨場感がびしびし伝わる会見だった。





——カンヌ国際映画祭コンペティション部門参加を真近に控えて。
三上博史 長いこと役者をやっている割に、賞という賞に全く縁がなかったんですよ(笑)。そんな自分が行ってしまっていいのかな、と思うんですけど(笑)。賞を取るとか取らないよりも、そういう場所に行けること自体がものすごく幸せなんです。楽しんできたいと思っています。 

とよた真帆 監督と初めてお会いした時、『赤い絨毯、踏みたいな』なんて失礼なことに軽口を叩いてしまったんですよ。でも、実際にこんなことが怒るなんて、自分の人生の中でも大事件です。調子に乗るタイプなので(笑)、来年もさ来年も行けるような役者になりたいですね。

青山真治 ワールドカップに出るようなつもりでいます。昨年は賞に漏れてしまったんですが、2度目の今年は負けないように。でも、僕自身がどうこうというより、作品がどうであるかだけなので、一刻も早く観ていただいて感想や批評を聞いてみたいです。

仙頭武則 全ては18日の22時に明らかになる。今から緊張しています。青山君にとってワールドカップなら、僕にとってはオリンピックのようなもの。毎年あるから質が悪いんですけどね(笑)。オリンピックは参加することに意義がありますが、カンヌは行っただけでは始まらない。今後もまず行くことが当たり前のように考えていきたいですね。







——とよたさんに。赤絨毯でゴージャスなドレスを着るとか、着ないとか。
とよた 知り合いにイタリア人のデザイナーがいるんですけど、今季まだ出ていないドレスを調達してくれたんです。ゴージャスという定義がどういうものなのかはよくわかりませんけど“うわぁー、勘違い”と言われないように心掛けています。

——三上さんに。「月の砂漠」は4年ぶりの映画ですよね。青山作品を選んだ理由を。
三上 そうか、4年ぶりになるんですよね(笑)。映画に関しては定期的に仕事をしているわけではなくて、ほんとにやりたいものだけをやるようにしているので結構ブランクが空いてしまうんです。仙頭プロデューサーとは何年も前から何かやりたいね、って話してたんですけど…。昨年「EUREKA」を観て「これは、すごい」と感動した後だったんで、青山監督と仕事できるなんてほんとに幸せでした。撮影そのものは短かったんですけど、その間、本当に幸せでした。

——監督に。カラーでスタンダードサイズ、「EUREKA」ほどの長尺でもない。意図して逆に向ったのですか。
青山 前作とは違ったものをやりたいとは当然思うわけですよ。でも、「EUREKA」がそれまでの作品と僕の中では変わらないように、「月の砂漠」も流れの中にあるわけです。同じ場所をぐるぐる回って、別の角度から見たような…。

——仙頭プロデューサーに。日本映画を輸出産業に、という試みは着々と進みつつありますが。
仙頭 着々と、と言うかうまく行き過ぎているという気もしています(笑)。システムは完全に出来あがったかなという気がしますね。今後もいつも新鮮な気持ちで緊張しながら映画を作っていきたい。来年はカンヌにも5本くらい作品を待っていきたいですね。

執筆者

寺島まりこ

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