『殺しの烙印』『すべてが狂ってる』『探偵事務所23くたばれ悪党ども』『河内カルメン』『東京流れ者』『けんかえれじい』などなど、日活時代の鈴木清順作品を28本、ニュープリントでお届けする「レトロスペクティブSTYLE TO KILL」が3月24日、テアトル新宿レイトショー枠でスタートした。毎週土曜のトークイベントも楽しみな本特集、24日は我らが清順監督『EUREKA(ユリイカ)』(偶然にも前日まで同じ劇場で上映していた!!)の青山真治監督のご対談。青山真治の必死のリードなるも、清順相手ではこれぞ直球の肩すかし、といった感じだった。その、なんともいえない盛り上がらなさ加減が笑いを誘うトークショーを一部紹介しませう。





「レトロスペクティブSTYLE TO KILL」特集チラシに一筆執った青山真治は、自作にも出演依頼をしたことがあるほどの清順フリーク。だけに、初っ端から緊張を隠しきれなかったよう。「カンヌの話、して…」と清順監督にせがまれ、「いや、でも僕の話をしても…。というか、僕の話というのも失礼なんですけど」と返答に窮するも、「フランスにいい女、いた?」、「(女優とかじゃなく)街歩いてるような人はどう?」、「日本の女の人の方がずっとキレイよね」、「モテたでしょ」と立て続けに質問攻め。タジタジぶりに、ガンバレ、青山!とエールを送りたくなってしまうのだった。
 体勢を立て直し、青山真治は「阪神ファン」、「映画を描く時は情念」(いずれも清順がマスコミに向け放ったコメントらしい)について言及するが、前者については「もう飽きたね、野球は。1球1球投げてんの、なんか耐えられないの」。後者は「情念なんかあるわけないじゃないですか。(雑誌読んだ青山君の目が)おかしくなったんじゃないの」。ガンバレ、青山!とエールを送りたくなってしまうのだった。
 とはいえ、スローな野球には耐えられなくとも3時間半もの『EUREKA(ユリイカ)』は“観た!”と言う清順監督。『陽炎座』で泣いたという青山真治の言葉を受け、「青山さんに泣いて頂くなんて、大いばりでメロドラマ撮れますよ」と満足げな一言を残したのだった。

執筆者

寺島まりこ

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