緻密に書き込まれた絵と、恐ろしくも奇妙な作品世界で絶大なる人気を誇る伊藤潤二の怪奇コミックは、これまでも、様々なクリエイターにより映像化作品がつくられてきましたが、また2本の個性的な作品が完成し3月24日より同日公開となりました。
その1本目『死びとの恋わずらい』は、“辻占”の行なわれている町で起きた出来事とヒロインの記憶が交錯する幻想ホラーであり、また一味違った純愛物語。昨年の東京ファンタのオールナイトでプレミア上映された作品で、待望の一般公開です。公開初日の24日、初回上映後の新宿東映パラスには、主演の後藤理沙さん、松田龍平さんをはじめとする若手キャストの方々や監督の渋谷和行さんらが登場し、舞台挨拶を行ないました。「若い女性に向けてつくった」という渋谷監督の意図が通じたのか、観客の比率は若い女性の方々がかなり高く、立ち見が出るほどの賑わいをみせていました。






原作とは設定の異なるヒロイン・深田みどり役の後藤理沙さんは、今作がホラー映画初出演。色々とはじめての経験が多かった中で、特に気をつけた部分は、「渋谷監督から、影のある笑いをしてくれと言われたのがあって、気をつけてやってたんです」とのこと。これから作品を楽しむ方は、このあたり特に注目です。
みどりが思いを寄せる同級生・柴山隆介役は松田龍平さん。デビュー作の『御法度』に続き本作でも影のある役を演じていますが、今後チャレンジしたい役柄はという質問に対し、「特にはないです。なんでもやっていきたいです。」と女性ファンの嬌声の中、自然体で応えていたのが印象的。
「夏休みみたいな楽しい現場でした」という挨拶とおり、舞台上では後藤さん、猪股ユキさんとはしゃぎながら仲のよい姿を見せ、他のゲストの挨拶などにも突っ込み(笑)を入れつつ、舞台挨拶を盛り上げていたのは、みどりの友人・鈴江役の三輪明日美さん。渋谷監督曰く「その場で脚本をいじっちゃったりしたんで、かなり苦しめましたよ」という撮影現場でしたが、「難しかったから楽しかったというのがあります。私の場合ユキが死んでるし、おねえちゃんも先に死んでるしで、被らないように気をつけてやりました」と、はしゃぎながらも演技に対するしっかりした姿勢を感じさせます。
明日美さんの実姉であり、最近では高校生役とかは流石に恥ずかしいという三輪ひとみさんは、「特殊な役柄を演じることが多いのですが、やりすぎるとコメディになってしまうのでその境目が難しいです。そういう狂気の境目というのを、自分で自覚して頑張りました」と、本作の中で強烈な印象を残す柄本はるか役について語りました。






みどり、鈴江らの友人・珠代役の猪俣ユキさんは、劇中のかなり思いつめていく役柄とご自身のキャラクターの関連に関して寄せられた質問に関しては、「ここでは言えないですね…」と気を持たせるご返事。また、死ぬ場面はやはり明日美さんと同様、他の方に被らないようにすることと、珠代らしさを出すことに苦労したそうです。女優さんそれぞれの、渾身の死様も本作の見所!?
今作が映画初出演となる高橋慎二さんは、三角関係に苦しむ光太郎役。「もてる役というのは日常にありうる役だと思いますが、その人たちが急に死に出してしまうということは経験できないですから…」と幻想映画出演の感想を話しました。
本作のエンディングテーマ『海のしずく〜ALL of me〜』はAdyaさんの作詞・作曲・歌によるものです。Adyaさんは映画の印象を、「すごく切ない印象で、自画自賛になっちゃいますが物凄く曲にあってると思いました」と、ひじょうに満足されたようです。なお、この曲は映画がビデオ化される時に合わせて、シングル・カットされるそうです。
舞台挨拶の締めは、本作が劇場用監督デビュー作となる渋谷監督で、ファンの方々へのお礼に続き「これからご覧になられていないお友達には、映画は面白かったけど結末は内緒…という風にお願いします。大勢の若い方特に女性向けにつくったつもりなので、女性のお友達にいっぱい来てもらえるように誘っていただけるように、誘ってもらえると嬉しいです」と、ホラーという言葉から一般的に受ける印象とはちょっと変わった味わいの自作についてアピールし、舞台挨拶を終えました。
なお、本作は新宿東映パラス2ほか全国劇場にてロードショー公開中です。

執筆者

HARUO MIYATA

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作品紹介
伊藤潤二原作『死びとの恋わずらい』
「死びとの恋わずらい」
『死びとの恋わずらい』初日決定、舞台挨拶も行われる