松本サリン事件を題材にした熊井啓監督作品「日本の黒い夏—冤罪—」がベルリン国際映画祭でベルリナ—レ・カメラ賞を受賞した。同賞は映画祭および世界の映画界に貢献した人だけに贈られるもの。だが、熊井監督は「僕の映画は(ベルリン以外の)映画祭では歓迎されないことが多い。それをベルリンは上映してくれた。お礼を申し上げたいのはこちらの方です」といたって謙虚だ。松本市で先行上映され、連日超満員で「もののけ姫」に次ぐ第2位の興行成績を上げている本編は23日から全国ロードショーとなる。これに先駆け、21日にはル・テアトル銀座にて凱旋特別試写会を開催。土井たか子氏らはじめ、各界の著名人も訪れた試写会に日活の中村社長、熊井監督、出演の中井貴一、寺尾聰、細川直美、遠野凪子が上映前の挨拶を行った。








「日本の黒い夏—冤罪—」は新生日活の第1回公開作品に当たる。本作のエグゼクティブプロデューサーでもある日活の中村雅哉代表から熊井監督に声が掛かったのは一昨年のこと。「社会性の濃い、文化性の高い映画を撮って欲しいと言われました。中村社長以下、日活の社員を始めスタッフ、俳優と全力をあげて作りました。完成した後は作品は観客皆さんのものですが、特に若い方に観ていただきたい」(熊井)。
 本作でテレビ局の報道部長を演じた中井貴一は「松本サリンは20世紀の日本のみならず、全世界において忘れられない事件でした。映画では事件に関わっている人々の行動が主軸になっています」。報道部唯一の女性記者が細川直美。「女性ならの繊細さと男性には負けないぞという力強さ、この両方が出せるように頑張りました」。実際の撮影はチームワークが良く、スムーズに進んだという。「松本サリンは過去の事件ではなく、心に傷が残っている人が今でもいるということ忘れないでほしい」とコメントしたのは女子高生役の遠野凪子。
冤罪の被害者を演じた寺尾聰は撮影中、「居心地の悪さを感じた」と言う。「僕自身、事件があった当時、テレビを見ながら加害者だった。“あの人が犯人じゃないのか”と思ってましたからね」。役の話があったとき、その旨を熊井監督に告げたところ“でも、これはドキュメンタリーじゃないから”と諭された。「俳優として貴重な経験であったと同時、一人の日本人としてこの事件を見つめ直すきっかけになりました」(寺尾)。

執筆者

寺島まりこ

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作品紹介
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