「現実と夢の狭間、起きている時と眠っている時の狭間、トワイライトゾーンを旅するような映画を撮りたかった」。タクシードライヴァーの不可思議なロードムービー「夢の旅路」はマイケル・ディ・ジャコモの初監督作品に当たる。主演のティム・ロスも絶賛した本作は、先ごろのゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞。映画祭会期中は夕張市民に写真を撮られ、サインをねだられ、恥ずかしそうに嬉しそうにしていたジャコモ監督。本インタビューは多忙の合間を縫って、単独取材に応じて頂いたものである。
(「夢の旅路」は6月、シアター・イメージフォーラムでロードショー)




——この詩的な物語はどこから生まれたのでしょう。
根本的なストーリーはずっと頭の中にありました。起きているのか、眠っているのか、はっきりしない夢うつつの時間は自分にとって表現したい大切なテーマだったんだよ。それが、ティム・ロスやジョン・タトゥーロとの出会いでどんどん具現化していったんだ。

——主演のティム・ロスは本作を“自分が出演した作品のベスト”と絶賛しています。彼と仕事するに至ったきっかけを。
サンダンス映画祭で知り合って、僕らは詩の話や芸術、クリエイトすること
について語り合った。ティムはこう言ったんだ。“俺はガン・ムービーによく出てるけどそういう仕事ばかりしたいわけじゃない”って。そんな話ですっかり意気投合してしまって、僕の映画の話を持ちかけてみたんだよ。

——脚本はティム・ロスを意識して書いたのでしょうか。
スクリプトは出来あがっていて、その後ティムの人格や経験を生かす形で少しづつ変えていった。完成稿までは共同作業のように、僕が書いたらその場で演じてもらい、違うと思ったら少し直し、またティムに演じてもらう。そうやって作り込んでいったんだ。撮影中も彼は支えになってくれた。僕が煮詰まってしまった時は乗り越えられるよう、様々なアィディアを出してくれたね。この過程は素晴らしかった。映画作りを通して、お互いベストなクオリティを引き出せる関係に育ったと思う。




——最初にモノクロで30年代の話が来、次に舞台は現代、カラーの映像に変わります。2つの物語の交錯は何を意味するのでしょうか。
何故と言われても説明が難しいんだけど(笑)。ショートフィルムの後に長いストーリーが来る、そういう構成がまず好きだと言うところかな。違う時代だけれど、舞台になるのは似たような砂漠で、登場人物たちは比喩的な意味を含めて旅をしている。2つの話のフィロソフィは共通するんだけど、時代が違うから現実との関わり方は全く違ってくるんだよ。

——原題は「アニマルズ」。バイオレンスをイメージするようなタイトルに思えるのですが。
よくない題だったかも(笑)。自分にとっては非常に意味のあるタイトルだけれど、日本題の「夢の旅路」の方がずっと理解しやすいと思う。「アニマルズ」というのは心理学的な意味合いで、プライマルな欲望を象徴したものですが、実際にはアメリカでもそのように取ってくれる人は少なかった。

——主人公のタクシードライバーは運命の女性と出会いながら、彼女を振りきって崖に飛び降ります。このラストは賛否の分かれるところでしょうが。
希望の後ろにあるものは何か、象徴として表現したかった。探し求めていた女性とたとえ別れるような結末になったとしても、僕は結果よりその過程がより大切だと思う。もちろん、人生にとって意味のあるものは人それぞれ違う。それが何かは受け取る側、観る側に考えてもらいたいんだ。

執筆者

寺島まりこ