あの『ツィゴイネルワイゼン』『夢二』の鈴木清順監督の待ちに待った最新作がついにクランク・イン!しかもそれはなんと、あの名作『殺しの烙印』のリメイクとでも言うべき『殺しの烙印・ピストルオペラ』!こいつを期待するなというのは無理な話!脚本・伊藤和典、特撮・樋口真嗣という『平成ガメラ』シリーズで日本映画界を沸かせたコンビがスタッフに参加。キャストも江角マキコ、山口小夜子、韓英恵(新人)、永瀬正敏、樹木希林、加藤治子、沢田研二、平幹二朗ととにかく豪華!注目の記者会見の模様をお伝えします。





現在撮影が続いている鈴木清順監督の最新作『殺しの烙印・ピストルオペラ』。既に4分の3の撮影が終了しているとの事。3月下旬に完成予定で、2001年秋に松竹配給で公開予定との事だ。
非常にち遠しいが、今しばらくのガマンである。
会見場に現れたのは鈴木清順監督、江角マキコ、山口小夜子、韓英恵(新人)の4人。

鈴木監督久々の作品なので、自然質問は初め監督に集中した。

——旧作の特殊上映が組まれますが、初めて監督の作品を見る方々に監督からメッセージを。
 まぁ、見て楽しんで頂けたらいいと思います。若い方が60年代の作品にどれほど共感できるのか、こっちの方が知りたい気分です(鈴木監督)。

——久々の監督作に、続編的意味合いのあるこの作品を何故選ばれたのですか? 
 色々企画はあったのですが、最終的にはスポンサーのお勧めに従いました(鈴木監督)。

——それは不本意だと言う事ですか?
 いやいや、不本意じゃないですよ。この歳で映画が撮れるって事は幸せな事ですから(鈴木監督)。

——特撮監督として樋口さんがいますが、特に特撮としてどのような見せ方を考えておられますか?
 元々特撮は好きじゃないです(笑)。全部手作りでいこうとしたんですが、やはりある部分は樋口さんの力を借りなければ、ならなくなりましてね。これこそ不本意でありますが(笑)、応援をいただきます(鈴木監督)。

飄々とした鈴木監督とは違い、3人の女優は皆キリリとしていた。

——江角さん、前作の真理アンヌさんはかなり露出度の高い衣裳でしたが、今回は?
 現在なのか過去なのか・・・不思議な時間軸の映画でして、全編を通して着流し風の衣裳でやっています。露出という部分に関しては、特にそういうことはやってないと思います(江角さん)

——初の殺し屋役という事ですが?
 ハイ、実は今までドラマでも映画でも、人を殺す役というものをした事がなかったんです。自分の意識も、生理的にもピンとこなかったの
で。ただ今回は人を殺す意味というよりは、その中の死生観や、人間の美しい部分と相まって存在する黒い部分などを描写したストーリー性に惹かれて、是非やらせて頂きたいと思いました(江角さん)。




——旧作はご覧になりましたか?
 ええ、宍戸錠さんの主演なされた前作は拝見させて頂きました。えーと・・・(溜息)、とにかく圧倒されました。ちょっと一言での感想はとても難しいです。でも今回の作品は、旧作の物語の面白さにプラスして、近年の監督の色彩美や死生観などが、もっと色濃く加わって力強い作品になるんじゃないかと思いながら、演じております(江角さん)。

——殺し屋のその着物にブーツという奇抜な衣裳、江角さんの発案だというお話ですが?
 監督が私に着たいものを着たらどうかと寛大におっしゃって下さいまして、自分なりに考えてみました。私自身、この映画の時間軸の不思議さを魅力に思っておりまして、時代をわからないようにしたかったという事でこういたしました。それに実際に着物というのは実用的にできていて、動き易いですし、袖や帯に色々入れる事ができて、カバンを持たなくていいというのが都合が良いのではないかと自分で思いました。ただ靴だけは草履で走るわけにはいかないので、衣裳さんなどと相談してブーツにしました(江角さん)。
 
——着物の柄は何パターンくらいあるんですか?
 基本的には黒ですね。また私の役の通称が「野良猫」なのでその刺繍がしてある帯をしています。あと、死に向かう時であるとか、殺しを意識しているシ−ンは、また全然違う色彩のものを着させてもらっています(江角さん)。

——伝説的なこの作品の続編的なものに出演なされる事について、それぞれどう思われますか?
「大変、光栄に思っております。監督のこだわりが凄いので、一生懸命体と心でそれに応えていきたいです。ただ監督は手作りのものがお好きなんです。最近雪なんか降ったんですが、自然な雪はおいらしく、雪掻きとかでその日は撮影が中止したりしました。きれいなのになぁ、と思ったんですが。そんな風に、毎日2シーンとか3シーンとか、丁寧にやっているんで、こっちも全身全霊でがんばっていきたいと思っております」(江角さん)。
「やはりとても光栄に思います。監督の演出のなさり方はすっごく不思議でシュールレアリスティックなんです。私はいつも朝、何もない状態で現場にいきます。そこで監督は一言何か言って下さるんですね。すると、魔法に掛かったように自然に役に入れるんです。それが自分でも不思議ですし、新しい発見でもあり、素晴らしい経験をさせて頂いていると思っております」(山口さん)。                                         
会見の最後にプロデューサー・小椋氏が言った言葉が印象的であった。
「なんかこう、とんでもない傑作になりそうな予感があります」(小椋氏)。

公開までまだ日があるが、新しい清順ワールドを期待して待っているとしよう。

執筆者

永見 憲宏

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