この度、映画『残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−』のブルーレイ・DVDが7月2日に発売となります。本作は、ベストセラー作家・小野不由美の原作を、『予告犯』『殿、利息でござる!』の中村義洋監督が映画化した戦慄のリアルミステリーです。今回、ブルーレイ・DVDの発売を前に、中村義洋監督にオフィシャルインタビューを行いました

$red Q:中村監督といえば『ほんとにあった! 呪いのビデオ』が浮かびますが、最近のイメージからはホラーと結びつかない人も多いかと思います。本作を撮ることになった経緯は? $
中村義洋監督(以下、中村):原作の小野不由美さんが『ほんとにあった! 呪いのビデオ』をもともとお好きだったんです。『残穢』の編集者の方が、「映画になったらいいですよね」と話していたところ、小野さんが「中村監督が演出してくれたらね」と言ってくれたそうで。それで僕のほうに連絡が入って原作を読ませていただいたんです。

$red Q:小野不由美先生の原作が映画化されるのは初めてですが、「これは映画にしたい、できる」と感じたのはどの辺でしょうか。 $
中村:何かいる、原因はなんだろう、その部屋に過去に何があったんだろう、と調べていくところが、『ほんとに〜』に通じるところがあったんですよね。「怖い」と思うポイントが一緒だな、と感じたのでやれると思いました。あと、読んだら素直に本当に怖かったというのもありました。







Q:(原作は)読むだけで呪われてしまうんですよね。
中村:映画にも入れましたが、「観ても祟られる、話しても祟られる、聞いても祟られる」と普通に書いてあるんですよね。「なんだよ、もう読んじゃったじゃん!」と(笑)。映画でも、観ている人が「自分もやばいんじゃないか」と感じるようなものにしたいと考えていて、その点は脚本の段階からかなり考えましたね。

Q:よくあるホラー映画と違って、本作のヒロインはほとんど叫びませんね。
中村:絶叫するためには何か起こるわけですが、この作品は脚本を書いている段階から何も起こらないんですよ。
何も襲ってこない。そこは少し気になっていて、小野不由美さんともお話しすることがあったのですが、小野さんも「出たら怖くなくなっちゃいますよ」と言ってくださって、これでいこうと確信を持つことができました。

Q:竹内結子さん演じる主人公の「私」は飄々としていて、場面によっては笑える程の微妙な空気を出されてますね。
中村:これは原作や小野不由美さんご本人から受ける印象がまさにこういう感じなんです。実際に小野さんに会いに行って、旦那様の綾辻行人さんと「霊とかいたらいいよね〜」と話しているのを見ていると、なんとも不思議な雰囲気なんですよ。

Q:監督も同じように「心霊現象とか、あったらいいよね〜」くらいのスタンスですか?
中村:僕は最初、ものすごく怖がりだったんです。でも『ほんとに〜』をやって1年くらいでまったく怖くなくなってしまったんですよね。結局3、4年はどっぷりホラーをやっていたのですが、何か違うなと思って断るようになりました。

Q:それでも今回引き受けたのは何故でしょうか?
中村:小野さんが『ほんとに〜』を大好きで、映画化するなら是非僕で、と言ってくれたからです。『ほんとに〜』はドキュメンタリーということでやっているから、誰も僕の仕事を演出として褒めてくれないんですよ(苦笑)。
それを褒めて頂いて嬉しかったんです。

Q:キャスティングについてですが、竹内結子さんとはこれまでにも組まれていますね。
中村:今回はこれまで自分が蓄えてきたものを全て出したいと思っていました。余計なことに神経を使いたくなかったので、信頼している人にお任せしたかったというのが一番です。原作を読むときはもう映画化前提で読んでいたのですが、途中から「私」は竹内さんで読んでいました。

Q:改めて竹内結子さんに任せて良かった点は?
中村:激やせメイクやコルセットが凄くしっくりきていたのが良かったです(笑)。年齢的にもぴったりでした。もう少し年齢が上になると、深刻になり過ぎてしまいますから。

Q:橋本愛さんはいかがでしたか?
中村:橋本さんが決まって、思わず吹き出しそうになりました。チラシやポスターで竹内さん・橋本さんが並んでいるのが頭に浮かんで、「これってそんなにキレイな映画だったの!?」と(笑)。 橋本さんは映画が好きだから、自分のやるべきことが分かっていると感じましたね。本当にお任せでした。また一緒に仕事がしたいです。

Q:途中で作品の空気を変える佐々木蔵ノ介さんは。
中村:素晴らしかったですよね。ぶち壊してほしかったので、狙い通りでした。オーディオコメンタリーでも少し話していますが、インディ・ジョーンズ風のところなど、すごく良かったですね(笑)。

Q:坂口健太郎さんはいかがでしたか?
中村:彼がお芝居がほぼ初めてに近かったころに『予告犯』で仕事したんですが、ちょっと変わった空気があったんです。もともと坂口くんがやった役は、原作ではおじさんなんです。北九州の心霊現象のことなら何でも知っているおじさん。でも映画化するにあたり若手で行くことになって、脚本を書き直すべきかとも考えたんですが、坂口くんだったらそのまま行けると思ったんですよね。実際、大丈夫でした。なぜかはうまく説明できないのですが、何か持ってるんですよね。

Q:DVD ではどのように楽しんで欲しいですか?
中村:怖いのが苦手な人は何人かで一緒に観て、びく!っとするのもいいと思います。本当に怖いものを楽しみたい人には、ヘッドホンを使って貰いたいですね。音にはかなりこだわって、特に畳をする音には何ヶ月もかけました。
あとは今回、ジェットコースターがなかなか落ちない感じにしています。こんなに上がっていいの?こんなに上がったら、落ちるときどうなっちゃうの??といった感覚を味わって頂けると思います。

Q:同時リリースの『鬼談百景』ではオープニングの「追い越し」を担当されています。こちらはどんな点にこだわりましたか?
中村:合成を使わないことです。合成では出せない怖さ、質感があります。

Q:今後もホラーを手がけたいですか?
中村:今回の作品は、観客の皆さんがどんな顔して観ているのか、後ろに座って反応を見ていたいような気持ちでした。こんなことは初めてで、それだけこれまでの作品よりエンタメ度が高くなっているのかなと思います。楽しませたい、イコール怖がらせたいという思いが大きかったです。今後は是非ホラーも撮りたいです。

「残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−」 ブルーレイ&DVD 7 月2 日発売
BD:¥5,200 DVD¥4,200 (税抜)
発売元・販売元:ハピネット (C)2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会
【監督】中村義洋『殿、利息でござる!』(公開中)『白ゆき姫殺人事件』
【原作】小野不由美『残穢』(新潮文庫刊)
【脚本】鈴木謙一『殿、利息でござる!』
【音楽】安川午朗『殿、利息でござる!』『ソロモンの偽証』
【キャスト】
竹内結子 橋本愛
坂口健太郎 滝藤賢一 佐々木蔵之介

執筆者

Yasuhiro Togawa

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