『ロパートキナ 孤高の白鳥』ウリヤーナ・ロパートキナ、オフィシャルインタビュー
世界最高峰のバレエ団マリインスキー・バレエ。ロシア帝国の宮廷バレエを起源とし、200年以上の伝統と誇りを持つ世界でも最も格調の高いバレエ団である。
そのマリインスキー・バレエの栄光と品格を体現する伝説のプリンシパル、ウリヤーナ・ロパートキナ。彼女の踊る“白鳥”は世界一と評される。なぜ彼女は踊り始めたのか。母校ワガノワ・バレエ・アカデミーを訪問し少女だった自分と向き合い語り出す。
パリ・オペラ座のかつてのエトワール アニエス・ルテステュやジャン=ギョーム・バール、彼女を取り巻く人々の声で紐解かれる孤高のプリンシパルの素顔とは?
彼女の代表作『瀕死の白鳥』、『愛の伝説』他、『カルメン』『病めるバラ』などの貴重な舞台映像や最愛の娘とのプライベートショット、マリインスキーの稽古場でのリハーサル風景で見せる迫力の表情など、“白鳥”の真実に肉迫する珠玉のドキュメンタリー。
Q:あなたの”白鳥”はとても素晴らしく日本でも、世界中でも多くの人々に愛されていますが、白鳥に特別な思い入れなどはありますか?
白鳥の成功の秘訣は手の動きにあります。指先まで美しければ、本当に素晴らしい白鳥になります。そして、白鳥と黒鳥は一人の人間が両方踊るわけですから、善と悪との対比をいかに表現できるかにかかっていると思っています。
Q:スポーツや芸術などでバレエの参考にしているものはありますか?
音楽や絵画は心が和むし休まるので好きです。バレエは生きる彫刻だと思いますので、絵画も同じですよね。
絵画と音楽が共に活きるのがバレエです。観客がバレエの舞台を見るということは、生きている絵画を見ているということだと、私は感じています。
Q:日本の芸術や文化で表現に取り入れたいと思ったものなどはありますか?
日本の浮世絵は本当に美しいと思います。いろいろな色を細かく組み合わせているのが美しい、海外にはない物ですね。
私の小さい頃に家に浮世絵があって、見る度に違う世界の物語に見えました。子供の時には、まさか日本にくるとは思っていなかったですし、遠い遠い夢の世界でした。
今、こうして日本にいるのが、とても不思議ですし幸せです。
Q:あなたのドキュメンタリー映画が来年公開されます。なぜこの映画の撮影に応じられたのですか?
ロシア・バレエのファンの方がドキュメンタリー映画を撮ろうと提案してくださったのです。バレエの中における愛について観客の皆さんと考えてみようということで提案を受け入れました。そして、撮影の時期と、『愛の伝説』の稽古の時期が偶々重なり、まさに、映画の趣旨に沿うような形で撮影が行なわれました。
Q:この映画でも『愛の伝説』は何回も出てきますね。あなたにとって『愛の伝説』はどのような作品でしょうか。
私にとって『愛の伝説』はどのような作品か?私の大好きな作品の一つです。『ジゼル』、『ライモンダ』、『バヤデルカ』、『白鳥の湖』といった叙情的なバレエでは《熱情》(テンペラメント)というものは滅多に要求されることがないのですが、この作品では自分がいかに《熱情》を表現できるかを試すチャンスでもあります。また、このラブストーリーでは、主人公の感情や考えが多彩で揺れ幅が大きく、いつもこの役を楽しんで演じ、踊っています。
執筆者
Yasuhiro Togawa