颯爽と目の前に現れると自分の体温が上がる感覚を覚えた。
『フライ・ダディ』主演のイ・ジュンギだ。
切れ長の目に漆黒の髪。落ち着いた低めの声で「よろしくお願いします。」と流暢に挨拶をしてくれた。
『ホテルビーナス』(04)で映画初出演。大ヒットした『王の男』(05)では王を虜にする一座の女役が記憶に新しい。
4月21日全国ロードショーされる『フライ・ダディ』では『王の男』の“女らしさ”とは正反対の喧嘩が強いカリスマ高校生を熱演している。15キロの体重の増減を成功させた演技派イ・ムンシク演じるさえないサラリーマンに喧嘩の仕方をクールに教える。
役柄と同じように湧き上がる情熱を内に秘め、俳優という仕事や人生観について語ってくれた。




—『王の男』の前にキャスティングが決定しましたね。出演を決めた理由を教えてください。

「新鮮さを感じたということと楽しめる作品だという印象を受けました。愉快の中であると同時に感動もある、良いシナリオであると思って気に留めていたところイ・ムンシクさんが出演するという知らせを聞きました。イ・ムンシクさんとは一度は共演したい先輩だったので決めました。自分が楽しんで撮影したいと思って決めた作品と言えます。」

—『王の男』での女役と『フライ・ダディ』の役柄とギャップがかなりあったと思います。演じるのに苦労しましたか?

「撮影中に苦労はなかったんですね。
ただ王の男が終わってからすぐの撮影でしたのでキャラクターになりきるのに時間がかかりましたね。だから撮影の前半部分は苦労したんですけども監督や周りがひっぱっていってくれたんですね。だから早く自分の立ち位置が見つかったという感じですね。」

—イ・ムンシクさんと具体的に共演してよかったと思うところはどこですか?

「俳優としての基本を学べた気がします。俳優として自分がもつべき姿勢ですとか演技に対する価値観とかを教えてくださった気がします。」

—この作品の好きなシーンやセリフがあったら教えてください。

「両方好きな点であげるとすると“恐怖の先に何があるか”とあのセリフの前後のシーンがすごく気に入っています。人というのは恐怖を経験しないとわからないことってたくさんあると思うんですね。恐怖であれ、なんであれ、ぶつかってみるのは基本ではないかと思います。そういったことは俳優としても一人の人間として生きていくうえでも非常に必要なマインドではないかと思います。」

—高所恐怖症らしいですが、恐怖を乗り越えたマインドとその撮影中のエピソードを教えてください。

「ロッククラインミングのところでは恐怖を感じましたね。あのシーンが終わり降りていくときに『あのセリフ通りでした。恐怖の先に何があるか見てきました。』と監督に言うと笑っていました。上にあがって一歩踏み出せばすぐ下に降りられるんですが、その一歩が踏み出せないんです。やはり人は恐怖を感じるとなかなか一歩踏み出せないという状況になるんだな。ということがわかりましたね。それは人生に置き換えることができると思います。人生においてもきっとそういう恐怖がくると思うんですけど、それを乗り越えればきちんと自分なりの選択をして目標も見えてくると思うんです。これから恐怖にぶちあたってみたときも乗り越えていきたいなと思っています。」

執筆者

加藤容美

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