ヨーロッパ初のフルCGアニメーションがやってくる!!同時進行でゲームソフトも開発された「ケイナ」は一人の少女が惑星の生存を賭けて闘うファンタジー作品だ。去る11月上旬に行われた第二回東京国際CG映像祭ではオープニング作品に選ばれ、観客を魅了した。古代のような、中世のような、近未来のような不思議な映像を作り上げたのは本作が監督デビューになるクリス・デラポルトだ。舞台となったアストリア星は「地球のもうひとつのビジョン。どこかで見たような、ないような、そんな特定できない雰囲気を出したかった」という。
 また、豪華な声優陣もこの映画のみどころだ。ヒロインのケイナにキルスティン・ダンスト、オパッツには「ハリー・ポッター」シリーズの校長役だった故・リチャード・ハリス、セレナイツの女王にアンジェリカ・ヒューストン…。対し、CGそのものはジャパニメーションの影響が色濃い。それもそのはず、監督自身、日本産アニメの大ファン。インタビュー中も「明日こそ、日本のアニメ作品を買いに行くぞ!!」と意気ごんでいたのだった。

※「ケイナ」は2004年3月6日、K’s cinema開館第一弾作品としてロードショー!!







——ケイナの出発点は?
クリス・デラポート 木。そう、樹木だったね。空に向かって木の枝が渦を巻いて上へ上へと垂直に伸びていっているようなもの。とても、大きくてどこにも存在しないような木だ。でもね、デッサンした後にその木を調べてみると西インド諸島の“呪われたイチジク”と呼ばれる木にそっくりだったんだよ。

 ——偶然にも!?どちらにせよ、アストリア星は過去のような、未来のような、どこかで見たことがあるような、ないような不思議な惑星ですね。
クリス それは意図したことだったね。いつの時代でどこということが定義できない、そんな不思議な感覚を与えたかった。地球と共通するような目印もこの映画のなかにはある。ただ、それは非常に少ないけどね。アストリアという星はある種、地球のもうひとつのビジョンだともいえるかもしれない。

 ——何度か中断しそうになったこともあるとか。
クリス 僕自身は中断しようと思ったことはないけどね(笑)。ただ、企画の立ち上げはたいへんだった。「ケイナ」に携わったプロダクションは2つあって途中で製作権が移ったりということもあったんだ。

 ——ケイナというヒロインについて。
クリス 特にモデルがいるわけじゃないけど、この映画を作るちょっと前、「GUMM」という女の子が戦う日本のコミックを読んだんだ。それに僕は宮崎駿の世界観が大好きだ。女性を主人公にしたストーリーを作りたいとずっと思っていたんだよ。

 ——ケイナの声優にキルスティン・ダンストを起用したのは?
クリス 彼女を最初に押したのはプロデューサーだった。それで彼女の映画をいくつか見たんだけど、「ケイナはこの子だ!」と思ったね。キルスティン自身も少女から大人に変わる過渡期にある。時には子供らしいしぐさ、時には大人の色気、その両方の曖昧さの中で揺れている感じがした。それに彼女の中にある種の反抗心も感じたんだよ。

 ——続編がありそうなラストですね。
クリス この映画自体、7年という非常に長い時間が掛かったのに上映時間はたったの1時間半だ。扱っているテーマは余りに多いのでひとつの作品では伝えきれないこともあった。実際、新しいものを予感させる形で終わらせた。ただ、続編ができるかどうかは日本での成功に掛かっているよ(笑)。 

 ——日本のアニメ作品が大好きだとか。今回の来日で購入しようと思っているアイテムは?
クリス コウジ・モリモトの新作DVDが出ていたらぜひ買って帰りたいね。フランスに入ってきている日本のアニメーション作品はごく一部だろうから、他にも色んな人のものをチェックして帰りたい。実はそれがすごく楽しみでね。日本に来てからは予定がびっちりだったんだけど「明日こそ!」、「明日こそ!」って思いながら仕事してるんだ(笑)。

執筆者

寺島万里子

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